小説『不夜城』や『少年と犬』などで知られる作家・馳星周さんによる競馬エッセイ『黄金旅程な週末』。ステイゴールドとその一族の熱烈なファンである著者の奮闘振りをお楽しみください。
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マイネルヴァッサーの引退が発表された。これで、中央に所属するステイゴールド直子は1頭もいなくなってしまった。
寂しい。が、いずれこうなることもわかっていた。
ステイゴールドという馬に巡り会わなければ、わたしと妻がこれほどまでに競馬に夢中になることもなかったと思う。
直子はいなくなったが、孫や曾孫の世代はまだまだたくさんいる。我々にできるのは、特異な血を引く馬たちの活躍に一喜一憂しながら応援することのみ。
それにしてもヴァッサー、お疲れさま。60数戦障害で戦って、一度も競走中止がないって、凄すぎるよ。やっぱ、ステイゴールドの血だなあ。
さあ、今週も一族たちの応援だ。
土曜は東京3Rから。ゴコウコイコイが3番人気、ブリガンティンとアマイクチヅケはそれぞれ9、10番人気。この2頭は厳しいかなと思っていたら、「原君が一発やりそうな顔してる」と騒ぎ出した。
どこで原君の顔見たの?
とにかく、原騎手騎乗、ブリガンティンとゴコウのワイドを買うことに。1頭だけのけ者は可哀想なので、ゴコウとクチヅケのワイドも追加。
クチヅケは中団、ゴコウとブリガンティンは後ろから。
直線入口でも位置は変わらず、後ろ過ぎるなあ、ちょっと無理かなあと思っていたら、ブリガンティンの強烈な差し脚が炸裂。あっという間に前団を飲み込んでしまった。
勝っちゃうよ~! ゴコウは?
ゴコウも来てる!
来い来い来い来い~!!
見事ブリガンティン1着、ゴコウ3着。ワイドは49倍なり。
いやあ、うちの奥さんすげえわ。騎手のやる気まで見抜けるようになってるなんて(笑)。
夫婦で大喜びしたのはもちろんだが、午前中、馬券を買ったのはこのレースだけ。2場開催だと、一族の出走が少ない。京都なんかほとんどいないもんなあ。
東京7Rにドラギニャンとマイネルアウルム。どちらも人気薄。来るとしたらアウルムかなあと、2番人気丹内騎手騎乗のノラリクラリとのワイドを。ノラリ2着も、アウルム7着まで。
京都7Rに一族4騎。ここはアレンテージョとレベルスルールの馬連ワイド!
レベルス3着だが、アレンテージョがまったく走らず。
東京8Rはニューファウンドが3番人気。前走レパードSは不良馬場で可哀想だったもんなあ。ここは巻き返しに期待。
2番人気ヴァナルガンドとの馬連。5番人気、タイセイアディクトを入れた3連複。
ニューファウンド、好位につけるも直線失速。そんなあ……。
ヴァナルガンド1着、タイセイ2着。悔しい~。
京都8Rにトリリオンボーイ。5番人気ですか。美味しいじゃないの。トリリオンから1、2番人気に流した馬連。
トリリオン、中団やや後ろ目から直線一気で、見事な差しきり勝ち!! 2着に1番人気のマサノユニコーンで馬連は29倍なり。美味しい~。
京都9R栂尾特別はバッケンレコードが断然人気。前走、2着とはいえ、強かったもんなあ。ここは勝ち上がりでしょ。
相手が人気どころッズもらえないので、4、5番人気へ馬単。
バッケン、中団で競馬。勝負所で動けず、直線も伸びが今ひとつで3着。頼みますよ、レジェンド~。
京都2歳Sは、ブラックハヤテが登録はしていたものの出走せずでケン。
東京最終にマーゴットゲイン。7番人気なので、3番人気ジャサルディアとのワイドを。
ジャサル2着も、マーゴット掲示板確保まで。
土曜はここまで。妻とブリガンティンのおかげでまずまずのプラス収支。日曜は勝ち負けしてくれそうな一族が結構いるし、この軍資金を増やしましょうぞ!
日曜も京都は一族の出走が少ない。あのー、得意なんですよ、京都。
まずは東京1R。ソードスレイプニルが二桁人気。前走2着だけど、メンバーレベルが違うってことですか。
舐めてる連中を見返してやれ!
相手はどうしようかと考えていると、妻が「菅原君がやりそうな顔してる」と発言。
ならば、ソードと菅原君のシュピラーのワイドで勝負。
しかし、シュピラーは4着まで。ソードは大敗。
東京2R、ホワイトフレイムスが3番人気。堅そうなのでケン。やっぱり堅い決着で、フレイムスは3着まで。
東京3Rは一族が3騎。アイファーサックスは厳しそうだが、ヴンダーバールが断然人気、ホールドザデイが3番人気。オッズあまりもらえないけど、一族馬単の返し!
ヴンダーハナを切って上がり最速の圧勝。ホールドは? お、2番手はラフィアンの勝負服だぞ。あ、違う、マイネルオランチアは一族じゃないんだよ。ホールドは3番手。
頑張れ~、差せ~!!
しかし、ラフィアン勝負服との差は縮まらず、ホールド3着。くそぅ。でも、ヴンダーが勝ったからよし。
京都5R障害未勝利。ネイチャーシップが2番人気。1番人気はレッドファーロだが、最内枠が仇になりそう。ならば、3番人気シークへ馬単。2頭軸3連複で4番人気アナゴサン、5番人気アナザーエースへ。
ネイチャー、出遅れたものの、二の脚で位置を上げていく。ハナを切ったのはレッドファーロ。しかし、飛越怪しいし、そのうちタレそう。やっぱり、相手はシークのみ。
そのシークが早めにファーロを交わして先頭に。ネイチャーは3番手で直線へ。
行け~!!
必死で叫ぶも、シークとの差は縮まらず、ファーロも粘りに粘っている。
結果、ネイチャー3着まで。くそう。ファーロがあんなに粘れるとは。4着アナゴサンだったからとっても悔しい。
東京7R、フィーチャリングが3番人気。末脚強烈な馬だけど、東京のダート馬場、前残りなんだよなあと弱気の虫が頭をもたげる。
が、当てるための馬券ではない。応援するための馬券なのだと自分に言い聞かせ、フィーチャリングから2番人気トレヴィ、4番人気メッエフアパラへの馬連を購入。
フィーチャリング、馬群やや後ろ目から直線一気。ダントツの上がり最速で1着。いやあ、トラックバイアス関係ないよ、この馬。
しかし、伏兵に間を割られてメッエが3着まで。馬券は外れたが、めっちゃ気持ちのいい勝ち方だったなあ。
東京8Rベゴニア賞。コルテオソレイユが5番人気。鞍上のマーカンドは先週、豪腕でウインデイジーを勝たせてくれた。ここも期待。1番人気ドリームコアとの馬連ワイド! ワイドはつかないけどよし。
コルテオは後ろからの競馬。直線、マーカンドが外に持ち出すと、マジですか? と目を疑いたくなるような末脚。先に抜け出したドリームコアとの差が見る間に詰まっていく。
行け、コルテオ! 勝っちゃえ~!!!
コルテオ、上がり最速もアタマ差届かず2着。惜しかったなあ。でも、いい走りだった。
みなさん、ステイゴールド一族にはがしがし追える外国人ジョッキーですよ! ガンガン乗せてください。
馬連は20倍、ワイドは7倍。ごっつぁんです!
京都8R、パンデアスカルが4番人気、プレイリードリームが7番人気。プレイリーは時計のかかる馬場がいいんだけど、それでも一族ワイドをまず購入。
馬柱を眺めると、速い上がりを使える馬があんまりいない。こんなん、アスカルと1番人気デルアヴァーで鉄板じゃん。馬連。先行勢で恵まれそうな3番人気クルミナーレとの馬連も追加。
レースはサクソンジェンヌがハナを切り、クルミナーレが番手、アスカルはイン3。
よし、直線で前の2頭をぶち抜くだけじゃん、楽勝じゃん。
しかし、サクソンの脚色鈍らず、クルミナーレとアスカルが必死に追いすがるもそのままの隊列でゴール。
サクソンジェンヌ、逃げるともそんな脚使えるとも聞いてないよ~。
東京9Rオリエンタル賞、ウインルピナスが8番人気。ルピナスには時計が速すぎるよなあ、府中の馬場。先週、福島で走れてたらなあ。それでも、ルメさんのレイニングとのワイドを購入。
ルピナスは5着。頑張ったけど、やっぱり、時計が速すぎました。
京都9R白菊賞に金沢競馬のエポカドーロ産駒、ピカピカピロコが参戦。厳しいのは知りつつ、応援のため複勝を購入。
ピロコ、追走できず、ブービーに終わる。
京都10R花園Sはヒルノハンブルクが1番人気。鞍上はレジェンド。昨日、バッケンレコードでやらかしてるよなあ、レジェンド。大丈夫かなあ。不安が胸をよぎる。
相手は、マルシュロレーヌの弟にあたるマルチャレアル。馬連と、2番人気ペンナヴェローチェを入れた3連複。
ハンブルク、番手を取るも、ハナを切る馬となんだかやり合うような格好。やめてよ、レジェンド~、すんなり番手でいいのよ~、御してよ~。
乗り難しい馬なんだよなあ、ハンブルク。
結局、直線で失速。
東京11RウエルカムSにパンジャ、コスモフロイデ、エリダヌス。馬券に絡みそうなのはパンジャのみ。
3番人気ウインオーディンとのワイドで10倍つきそう。ならば、パンジャとオーディンでいいんでないかい。
パンジャ、出足がついて好位から。直線、懸命に脚を伸ばすもヴィレムとオーディンにやられて3着。昇級戦でも頑張った。いずれ、勝ち上がれるという走りだ。
オーディンとのワイドは最終的に9倍。まあよし。
京都11RオータムリーフS。ベルダーイメルがしんがり人気。
「なんでこんなに斤量背負わされるわけ?」
と妻はお冠。確かに、ルールとはいえ斤量きついよなあ。応援のため、複勝を。
ベルダー、好位に取りついて頑張るも、直線、脚が伸びずに7着。年齢、斤量を考えるとよく走ってる。
そしてジャパンC。一族がいないから、気楽に予想。
わたしはクロワデュノールとディープモンスターのワイド。モンスターはクロワが先行していく後ろを確保して、インでじっとしてれば一発あってもおかしくない。
妻はブレイディヴェーグとダノンデサイルのワイド。
レースはスタート直後にアドマイヤテラが落馬競走中止というアクシデント。
妻が「亀ちゃん可哀想」と一声。
スタートを決めたセイウンハーデスが大逃げ。離れた2番手がホウオウビスケッツ、クロワが3番手。よし、これで5番手辺りにディープモンスターがいればOKじゃないの? あれ?
モンスター、思ってたのよりだいぶ後ろ。スタートでごちゃついてしまったか。
これで、わたしの馬券は終了。
残るは妻の馬券だが、ブレイディヴェーグは馬群後方。きついかなあ。
直線は、マスカレードボールとカランダガンの壮絶な叩き合い。制したのはカランダガン。強かったあ。
デサイルが3着、ブレイディは6着。
これで、日本とパリ・ロンシャンじゃ馬場が違うからなんて言い訳はできなくなってきましたよ、日本競馬関係者のみなさん。向こうで勝てる馬をつれて行きなさいよ。そういう馬を作りなさいよ。
一応言っておくけど、ステイゴールドの血を引く馬は、凱旋門賞の好走率、めっちゃ高いですよ。
というわけで、土曜の勝ち分を守りきってジャパンカップウィークは終了。
それにしても、来週のステイヤーズS、一族多過ぎ問題をどう解決するべか。
