プロ馬券師・双馬毅氏が実践例を交えながら馬券理論を解説する『双馬毅の“ローテ×血統”錬金術』。今回は阪神JF、朝日杯FS、ホープフルSの振り返りです。
なお、『競馬放送局』では双馬氏の推奨レース(予想)、特選リストを公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください!
双馬:今週と来週は12月~1月に行われた2、3歳戦を振り返って、今後のレースにどうつながるかを考えていきたいと思います。
──昨年の今頃は牡馬のレベルが微妙だとおっしゃっていましたが、今年はどうですか?
双馬:昨年よりは重賞らしい重賞が多かったと思います。ホープフルSを牝馬のレガレイラに勝たれましたけど、牡馬のレベルも低くありません。
──朝日杯だけD評価ですか。気になりますね。では、今回はまずGIについて、阪神JF、朝日杯FS、ホープフルSの順で解説をお願いします。
<阪神JF>
双馬:チェルヴィニアとボンドガールが回避して「メンバー的にどうなんだ?」と言われていましたけど、僕はそうは思っていません。もともとアスコリピチェーノを高く評価していましたし、コラソンビートも2頭に負けた新馬戦当時よりかなり成長しています。なので、チェルヴィニアとボンドガールが出走していても、このメンバーに確実に勝てるかどうかわからないぐらいのレベルだったと思います。
勝ったアスコリピチェーノは新馬戦の段階で「たまに出るキレ味型のダイワメジャー産駒」と言いましたけど、まさにそういう大物感があります。ただ、これでクラシックも勝てるかと言われるとまだ分かりません。有力馬の1頭であることには変わりないですけど、例年ここから強い馬が出てきますからね(※期待の新星については来週紹介予定)。
2着のステレンボッシュは前走までは平均レベルぐらいのパフォーマンスしか見せていませんでしたが、一気に跳ね上げましたね。ウインドインハーヘアの牝系ですから、血統のなせる業としか言いようのない激走です。弱い相手と戦っているうちは本当の強さが見えなかったということだと思うので、ここまで能力が高いことに驚きました。
コラソンビートは延長ローテが良かったか悪かったか分かりませんけど、追走させたのは良くありませんでした。1400mだった前走よりも追走が速くなっていますからね。そのぶんキレ味が鈍りました。これで3着に来たというのは能力が高い証拠なので、評価していいんじゃないでしょうか。
このように今年は早熟馬だけの阪神JFではありませんでした。特に、上位3頭はクラシックでも通用する可能性があります。
──他に注目馬を挙げるとすれば?
双馬:まず、1番人気4着のサフィラです。やはり短縮に反応した後のハーツクライ産駒は良くないですね。追走が速くなったのも小柄なハーツ産駒にはツラかったと思います。
7着のスウィープフィートは母父ディープスカイなので、追走が緩くなったときに一気に走る血統です。成績を見てもまさにそんな感じで、緩くなったペースのときは強いんですけど、速くなると弱い。それでもそこまで負けていませんから、次走以降で穴をあけそうです。
──4番人気で10着に負けたキャットファイトは、アスター賞の回顧で「阪神JFで過剰人気になるんじゃないか」とおっしゃっていましたね。
双馬:「レコード決着だけど直線が追い風だったので鵜呑みにはできない」と言いましたけど、やはりその通りでした。高速馬場の恩恵で出たこのタイムのせいでずっと過大評価されるので、こういうのを知っておくと後々使えるわけです。
<朝日杯FS>
双馬:こちらはGIとは呼べないメンバー構成でした。レベルが低いと思った理由は2つあります。
1つは人気馬2頭が能力を全く出せていないということです。2番人気のシュトラウスが暴走して、3番人気のダノンマッキンリーもローテ不利に加えて、折り合いを欠いてレースになっていませんでした。
次に不利があった馬が上位に来ているということです。例えば、2着のエコロヴァルツは良い馬ではありますが、たぶん阪神芝1600がベストの条件ではありません。しかも、最後方に下げるという不利な競馬をしているのに2着まで来れました。
3着のタガノエルピーダも新馬戦での評価自体は高かったんですけど、キャリア1戦の牝馬がハイペースで先行するという厳しい競馬をしながら3着に粘りました。
4着ジューンテイク、5着タガノデュードは短縮ローテで激走した後、6着サトミノキラリもマイルで強い馬ではないはずです。
──全馬が力を出し切って、その中で恵まれた馬が上位に来るというレースではなかったということですね。
双馬:はい。各馬のローテ、上位に来たメンバー、着差を見ればレベルは分かるんです。僕はタイムよりもそっちを重視します。その視点で見ると朝日杯FSはレベルが低くなる要素が重なっているんです。
──この着順に騙されてはいけないわけですね。ジャンタルマンタルもですか?