ハクホウクンとホワイトエンジェル賞/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ

超豪華メンバーとなる見込みの札幌記念。何かと話題満載の中、ソダシとハヤヤッコという白毛馬2頭の競演は、やはり大きな注目のひとつです。

ところで、ソダシやハヤヤッコの祖母シラユキヒメの2歳年上の競走馬で、1997年から2000年まで足掛け4年間、大井競馬場で32戦3勝という成績を残した白毛の牡馬ハクホウクンを覚えているでしょうか。1997年12月30日、大井の帝王・的場文男騎手とのコンビでハクホウクンが手にした勝利は、日本競馬史上初の白毛馬の勝利。このニュースはスポーツ紙の1面を飾り、大井競馬場内の売店にはグッズが並べられました。

ハクホウクンの父は日本初の白毛の競走馬ハクタイユーです。1972年の日本ダービー馬・ロングエース(黒鹿毛)と母ホマレブル(栗毛)の間に1979年、シラユキヒメ同様、突然変異で生まれた白毛馬で、日本軽種馬登録協会(現ジャパン・スタッドブック・インターナショナル)が8つの毛色のうち「粕毛(かすげ)」を削除し「白毛」を加えたのは、このハクタイユーのサラブレッド登録がきっかけでした。

中央未勝利に終わったハクタイユーは、種牡馬として白毛馬の生産に励みました。中でも、1983年に国内2例目の突然変異で生まれた白毛の牝馬カミノホワイトとの間に生まれたミサワボタン(牡、1993年生まれ、白毛、母父カブラヤオー)は競走馬にはなれませんでしたが、両親とも白毛馬という日本で唯一のサラブレッドでした。

一方で、栗毛のアングロアラブ・ウインドアポロッサとの間には、ハクホウクンと、2歳下の全妹にもホワイトワンダーという白毛の牝馬が誕生しました。ホワイトワンダーは上山競馬(現在は廃止)で1999年に2勝し、日本で2番目に勝利を挙げた白毛馬となりました。

そんな中、1999年、大井競馬に芦毛と白毛のみが出走できるという「ホワイトエンジェル賞」が創設されました。ホワイトワンダーが所属する上山競馬からも出走可能で、白毛兄妹の競演を期待したレースでした。しかし、地元の兄ハクホウクンは第1回と第2回のレースに出走したものの(第1回は14着、第2回は5着)、妹のホワイトワンダーが「ホワイトエンジェル賞」に出走することはなく、レースは2002年を最後に消滅。真冬の大井を彩る名物レースでしたが、白毛兄妹の競演という夢は叶いませんでした。

あれから22年余り。奇しくも今年2月、ハクホウクンが28歳で天寿を全うしました。芝・ダート重賞制覇のハヤヤッコと、3つのGIタイトルを持つソダシという、歴史を変えた白毛の従兄妹2頭には無事にレースを迎え、真夏の札幌で、あの時叶わなかった白毛一族の競演という夢を叶えて欲しいと思います。