今回のタイトルを見て、すぐに何のことか分かった方はいるでしょうか?
『レジェンド騎手の名前をなぜ2つに分けるんだ?』
そう思った方が多いのではないでしょうか。違うんです。今回のテーマは武豊騎手のことではありません。
今回は、私が密かに注目し続けている武さんと豊さんのハナシ、美浦の奥村「武」調教師と栗東の奥村「豊」調教師について取り上げます。
JRAに所属する2人の奥村調教師。美浦の奥村武師は、1976年7月10日生まれの47歳。一方、栗東の奥村豊師は、1977年8月26日生まれの46歳で、年齢は武調教師が1歳上です。知らない人は『年子の兄弟か?』と思ってしまいますが、東京出身の武調教師と栗東出身の豊調教師の間に血縁関係はありません。ただこの2人、調べれば調べるほど、不思議な縁があるのです。
2人の奥村調教師は、ともに2014年度のJRA調教師免許試験に合格。同期には、美浦の武井亮調教師、栗東の池添学調教師、西村真幸調教師、松下武士調教師がいます。調教師試験という難関を武調教師は3度目、豊調教師は5度目の挑戦で突破したそうです。
姓や免許取得のタイミング以外に2人に共通するのが、ともに競馬と無縁の一般家庭で育ったということです。
武師は、自身が中学生だった1990年前後、オグリキャップやアイネスフウジンらの活躍で空前の第2次競馬ブームだった頃に競馬にハマり、調教師という職業を意識するようになりました。大学卒業後に浦河町のディアレストクラブに就職。馬乗りの基本を教わった後、美浦の国枝栄厩舎で調教助手になると、グランプリホースのマツリダゴッホ、天皇賞馬のマイネルキッツ、三冠牝馬のアパパネといった名馬を担当しました。
一方の豊師も実家は競馬と無縁でしたが、乗馬をきっかけに馬に携わるようになり、2001年からビッグレッドファームで勤務。調教師を目指し、2003年に競馬学校の厩務員課程に入学。テイエムプリキュアなどを管理した五十嵐忠男調教師のもとで厩務員や調教助手を務めた後、2006年からは藤岡健一厩舎の調教助手となりました。
そんな東西2つの奥村厩舎の成績は驚くほど似通っています。特にここ数年は顕著で、2020年は美浦の武厩舎が19勝の67位、栗東の豊厩舎が21勝の56位(2勝差)。2021年は武厩舎21勝61位、豊厩舎25勝44位(3勝差)。2022年は武厩舎27勝33位、豊厩舎32勝23位(5勝差)と、僅差ながらいずれも栗東の豊厩舎が上回っていたのですが、今年はここまで美浦の武厩舎が30勝の20位、栗東の豊厩舎が22勝の53位と、武厩舎が逆に8勝リードしています。
これによって、通算の勝利数も武厩舎が194勝と、191勝の豊厩舎を逆転。厩舎を開業したのが美浦の武師が2014年の3月、栗東の豊師が1年遅れの2015年の3月。厩舎としての年数は美浦の武師が1年長いので、比較はフェアではないかもしれませんが、少なくとも私は密かに、同期で、同姓で、名前を合わせると武豊な2人のライバル関係を勝手につくって興奮しているのであります。
ちなみに重賞タイトルは、美浦の武厩舎が今年、ノースブリッジでAJCCとキミワクイーンで函館スプリントSを勝って通算5勝。一方、栗東の豊厩舎は今年はテーオーソクラテスが小倉サマージャンプを勝って通算4勝。
ほら、これも1勝差。
ご本人同士に伺ったわけではないのですが、これは絶対に意識しあっているでしょう!いや、そうであってほしい!(笑)
2023/12/07 (木)
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。