競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。今回のテーマは「ウシュバテソーロに勝った馬たち」です。
昨年、ダート開催では日本馬初となるドバイワールドカップ優勝を果たし、暮れにはGI東京大賞典の連覇も達成したウシュバテソーロ。レーティング122ポンドは、ダートでは国内トップの数字です。
しかし、ウシュバテソーロの通算成績は32戦11勝。そのうち8勝はダートに転向した一昨年の春以降のもので、それ以前の芝における22戦は、その能力を出し切ることができなかった「敗北」の歴史でした。
改めてその戦績を振り返ると、ウシュバテソーロが芝舞台で敗れた相手には、その後に様々な舞台で活躍した競走馬が多く、とても興味深いことが分かりました。そこで今回は、今や世界屈指のダートホースとなったウシュバテソーロに勝った馬たちをまとめました。
◆2019.12.14 中山7R 2歳未勝利 芝2000m
勝ち馬:ゼノヴァース
ウシュバテソーロのデビュー3戦目(鞍上は江田照男騎手)。勝ったゼノヴァースは平地3勝したのち障害転向。2022年のJGII・東京ハイジャンプを制し、暮れの中山大障害ではニシノデイジーの2着に入った。ウシュバテソーロは5着。
◆2020.5.9 東京11R プリンシパルS 芝2000m
2着馬:ポタジェ
2着馬ポタジェは2022年の大阪杯を制しGI馬に。ウシュバテソーロ同様に明け7歳となった今年も現役。この時ウシュバテソーロは4着。6着馬は2021年のAJCC(GII)を勝ったアリストテレス。
◆2020.8.29 札幌9R ルスツ特別 芝2600m
勝ち馬:ウインキートス
ゴールドシップ産駒の牝馬ウインキートスは、2021年のGII・目黒記念を優勝。同じステイゴールド系のウシュバテソーロは10頭立ての9着。
◆2021.4.17 中山7R 4歳以上1勝クラス 芝2200m
勝ち馬:アラタ
ウシュバテソーロと同世代のアラタは、この勝利をきっかけに4連勝。OPクラスでも2勝をあげ、GIII・福島記念2年連続3着、去年GII・金鯱賞3着など重賞レースの常連。この時ウシュバテソーロは3着。
◆2021.12.25 中山11R グレイトフルS 芝2500m
勝ち馬:ヴェローチェオロ
エフフォーリアが制する有馬記念の前日に行われた同舞台のグレイトフルS。勝ったのは当時3歳だったゴールドシップ産駒ヴェローチェオロ。1歳上のウシュバテソーロ(この時4着)と同じ千代田牧場の生産馬で、尾花栗毛の美しい馬だった。現在は馬事公苑で繋養。
◆2022.2.5 東京11R 早春S 芝2400m
勝ち馬:ハーツイストワール
今年は「ジャパンカップ 2023年ロンジンワールドベストレース受賞記念」として行われた2年前の早春S。勝ったハーツイストワールは、この年、札幌日経OPを勝ったほか、GII・アルゼンチン共和国杯で2着に入った。明け8歳となった今年も現役で、次走は17日のダイヤモンドSを予定。ウシュバテソーロは14頭中11着。
『ずっと見ている高木調教師は“以前より素直になった”と言いますが、最近コンビを組むようになったので以前のことを知らない私からすると、本当にわがままで、扱うのが難しい馬です』と、川田騎手がはっきり話すほど個性的な性格のウシュバテソーロ。性格だけでなく、その戦績もまた個性的です。
特別賞に選ばれた2023年度JRA賞の授賞式では、了徳寺オーナーから明け7歳となった今年のプランと、年内引退の意向が明かされました。その雄姿を見ることができるのは中東での2戦と、JRAのGIタイトルを目指すチャンピオンズカップ、3連覇を狙う東京大賞典の計4戦というのが現実的でしょう。
個性的なキャリアを歩んできた、個性的なキャラクターのウシュバテソーロの走りを、しっかりと目に焼き付けたいですよね、馳先生。