競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。
今回のテーマは「アジア競馬会議のハナシ」です。
現在、札幌で「第40回アジア競馬会議」が開催されています。
「アジア競馬会議(略称ARC:Asian Racing Conference )」は、1960年にアジア諸国間の親善と相互理解の促進、加盟国間の競馬交流を目的として、日本中央競馬会(JRA)とビルマ(現ミャンマー)のラングーンターフクラブの提唱により設立された国際会議です。
東京で第1回大会が開催されて以降は各加盟国で定期的に開催され、日本での開催は1960年の第1回、1969年の第8回、1985年の第18回、2008年の第32回に次いで16年ぶり5回目となります。
2001年の第28回バンコク大会で名称が「アジア競馬会議」から「アジア競馬連盟(略称(ARF: Asian Racing Federation)」と改称され、ARCは会議そのものを指すようになりました。
現在、「アジア競馬連盟」には、アジア、オセアニア、アフリカ、中東の国立競馬統括団体と競馬関連団体が加盟していて、今年7月には日本の地方競馬全国協会(NAR)にも準会員資格が付与されたとのことです。
では、加盟27ヵ国から約500名が参加して行われている今年の会議はどのような内容なのでしょうか。
公式サイトによると、初日の27日には競走馬のアフターケアのための国際フォーラムとオープニングセレモニーが行われたほか、28日~30日にはコンベンションセンターで「ビジネスプログラム」の日程が組まれています。
ビジネスプログラム初日は、ファンとの関係性や文化などに焦点を当て、パネルディスカッションには武豊騎手とクリストフ・ルメール騎手が出席しました。
2日目には、賭事と公正確保についてや馬の福祉問題についてのプレゼンが行われ、この日のパネルディスカッションには三嶋牧場の三嶋健一郎取締役と矢作芳人調教師が出席。
さらに30日の3日目には、生産分野の課題が取り上げられるということです。
これまで4度行われた日本でのアジア競馬会議は、いずれも東京での開催でしたが、今回は初めて札幌での開催となりました。日本が世界に誇るサラブレッドの約98%が生まれている北海道を開催地とした背景には、日本の生産界の内情を紹介しようというホスト国・日本の思惑もあります。
ビジネスプログラム終了後の31日(土)は札幌競馬場で競馬開催があります。この日は、マレーシア、シンガポール、インド、フィリピンのアジア5か国の競馬団体より寄贈された優勝カップをかけた競走を2日間かけて行う「アジアウィーク」が今年は札幌で行われるほか、札幌2歳Sの1つ前の10レースにはアジア競馬会議開催を記念して「アジア競馬連盟トロフィー」という3勝クラスの芝1500m戦の競走も組まれました。
また9月1日(日)には、希望者に社台スタリオンステーション、ノーザンファーム、ノーザンホースパークへの訪問のオプションツアーも予定されています。ノーザンホースパークの訪問では、引退競走馬のセカンドキャリアに向けてリトレーニングされるサラブレッドのためのプログラムも紹介されるようです。
今年4月にはマカオの競馬が廃止になったほか、シンガポールの競馬も10月をもって終了となるなど、アジア競馬の現況は決して明るいものだけではありません。提唱国・日本で行われている今回の「アジア競馬会議」が地域全体の発展につながる有意義なものになってほしいと期待しています。