競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。
今回のテーマは先週末の競馬を席巻したゴドルフィンの偉業について。
4日朝の「ケンタッキーダービー中継」をご覧いただいた皆様、ありがとうございました。
日本馬2頭は水が浮く不良馬場だったことも響いて、ともに2桁着順の完敗でした。異国の地での戦いの厳しさを再認識するとともに、昨年フォーエバーヤングが見せた「3着」という結果の重みもあらためて感じました。
今年のケンタッキーダービーを制したのはゴドルフィンの自家生産馬ソヴリンティでした。父はInto Mischiefで、6年連続の北米リーディングサイヤーは産駒のケンタッキーダービー3勝目となりました。
半分が泥にまみれたゴドルフィンブルーの勝負服を着ていたのはジュニオール・アルバラード騎手。ベネズエラ出身の38歳はケンタッキーダービー6度目の挑戦でダービージョッキーの栄誉に輝きました。
管理するのは45歳で殿堂入りを果たし現在71歳の名伯楽ウィリアム・モット調教師。今年と同じ不良馬場だった2019年のケンタッキーダービーでカントリーハウスが優勝して以来のダービー2勝目となりました。ただ6年前はマキシマムセキュリティの降着で繰り上がっての勝利で、1位入線での勝利は今回が初めてでした。
モット師は、ソヴリンティの体調を最優先し、2週後の米三冠競走2冠目G1プリークネスS(17日ピムリコD1900m)には向かわず、ベルモントパーク競馬場が改修中のため今年もサラトガ競馬場(ダート2000m)で6月7日に行われる3冠目のG1ベルモントSに向かうことを表明しました。
また、ゴドルフィンの所有馬であることから、来年4歳になってのドバイワールドカップ参戦も視野に入っているようです。
さて、そのゴドルフィンにとって、先週末は歴史的で奇跡的でした。
ケンタッキーダービーの前日、同じチャーチルダウンズ競馬場のダート1800mで行われたケンタッキーオークスでは、やはりゴドルフィンの自家生産馬でデビューから6連勝中だったメダグリアドーロ産駒の3歳牝馬グッドチアが人気に応えて優勝。
ゴドルフィンによるケンタッキーオークス制覇は一昨年につづいて2勝目でしたが、翌日、同じく自家生産のソヴリンティがゴドルフィン待望のケンタッキーダービー初優勝を果たし、チャーチルダウンズでのオークス&ダービーW制覇となりました。
さらにケンタッキーダービーから遡ること8時間前。イギリス・ニューマーケット競馬場で行われた英クラシック初戦の英2000ギニー(直線1マイル)では、ウィリアム・ビュイックが騎乗したルーリングコート(チャーリー・アップルビー)が優勝。
ルーリングコートはゴドルフィンが去年5月の仏アルカナブリーズアップセールでクールモアとの争奪戦を制し歴代最高額の230万ユーロで購入したジャスティファイ産駒の米国産馬で、当日は2番人気に評価されていました。
英国でもゴドルフィンの勢いは止まりません。翌日、同じニューマーケット競馬場の直線1マイルで行われた3歳牝馬の英1000ギニーでは、ゴドルフィンの自家生産馬で、前日のルーリングコートと同じ調教師・騎手のデザートフラワーが優勝。去年のフィリーズマイルにつづくG1連勝でデビュー5連勝を果たしたのです。
そして、デザートフラワーの父は2014年の英2000ギニーや2015年のロッキンジSを勝ったナイトオブサンダー。ナイトオブサンダーは、ドバイミレニアムが残したわずか1世代56頭の産駒の1頭ドバウィの産駒で、デザートフラワーは、ドバイワールドカップを圧勝したゴドルフィン史上最高の名馬の血を引く馬でした。
大西洋を挟んだ2つの競馬大国でゴドルフィンが成し遂げた英米クラシック4連勝という大偉業。その締め括りは、馬主・生産組織「ゴドルフィン」と、その種牡馬事業ブランド「ダーレー」、そして創設者のシェイク・モハメド殿下の歴史が詰まった自家生産馬の勝利でした。