競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。
今回のテーマは「20回目を迎えたヴィクトリアマイル」について。
今週末はGI・ヴィクトリアマイルです。春季に行われる4歳以上牝馬限定のマイルGIとして、オークスの前週に行われ今年で20回目。今年が第30回だった先週のNHKマイルCより10歳若いGIレースです。
2006年に行われた第1回は、1番人気が桜花賞とNHKマイルCの勝ち馬ラインクラフト、2番人気に2年前の桜花賞馬ダンスインザムード、3番人気に前年の秋華賞馬エアメサイア、そのほか3年前の2歳女王ヤマニンシュクルや4歳世代の重賞勝ち馬ディアデラノビアといった好メンバーとなりました。
初代女王の座に就いたのはダンスインザムード。1番枠から好スタートを切るとラチ沿いの好位を進み、稍重の馬場ながら内側で問題ないと判断した鞍上の北村宏司騎手はそのままのコース取りで残り200mまで追い出しを我慢。最後は外から迫るエアメサイアとディアデラノビアを振り切り、ダンシングキイ一族の良血の牝馬は桜花賞以来2年ぶりの勝利を挙げたのでした。
北村宏司騎手はこの時の勝利がデビュー8年目にして初のGI勝利でしたが、ヴィクトリアマイルは翌年もジョッキーの初GIタイトルというレースになりました。
前年のオークス・秋華賞の二冠牝馬カワカミプリンセスが1番人気、6歳になったGI・3勝馬スイープトウショウが2番人気だった第2回のレースを制したのはコイウタ。歌手の前川清さんが所有するフジキセキ産駒でした。
4番枠から内側の好位を進んで抜け出しコイウタを勝利に導いたのはデビュー5年目の松岡正海騎手。皐月賞では15番人気のサンツェッペリンで一旦先頭に立ったものの差し返されハナ差2着と涙を飲んでから1か月。今度は12番人気のコイウタで初のGIタイトルを手にし、3連単228万3960円という高配当を演出しました。
この時のコイウタの単勝は6030円でしたが、ヴィクトリアマイルは過去19年でコイウタを含め3頭の“単勝2ケタ人気”の馬が勝利しています。
2ケタ人気馬が勝利した2度目のレースは2014年の第9回。前年の優勝馬ヴィルシーナは、その後6連敗を喫し、同舞台の東京新聞杯、前哨戦の阪神牝馬Sはともに11着という2ケタ着順で11番人気に甘んじていました。手綱をとっていたのは優勝した1年前と同じ内田博幸騎手。この年は果敢にハナに立つという戦法に出てヴィルシーナの闘争心をよみがえらせ、見事な復活劇でヴィクトリアマイル連覇を達成したのです。
11番人気ながら単勝は2830円と常識的な配当でしたが、レース史上3度目の2ケタ人気馬の勝利となった去年の第19回は、15頭中14番人気のテンハッピーローズが勝利し、レース史上初の単勝万馬券となりました。単勝2万860円の払い戻しはGIレースの単勝において歴代4位の高額配当でした。
ヴィクトリアマイルの高額配当と言えば2015年の第10回です。
18頭中のシンガリ人気だった江田照男騎手のミナレットが大外18番枠から逃げて粘りに粘れば、離れた2番手から直線で伸びてきたのは吉田豊騎手の12番人気ケイアイエレガント。上位人気勢が軒並み伸びあぐねる中、戸崎圭太騎手の5番人気ストレイトガールが上がり33.0秒の末脚で抜け出し勝利したのでした。
5番人気→12番人気→18番人気とシンガリ人気馬を含む2頭の単勝2ケタ人気馬が馬券に絡んだ3連単の払い戻しはGI歴代最高配当の2070万5810円。今でも語り草となっている大波乱となりました。
あれから10年――。先週のNHKマイルCも3連単は150万円を超える高額配当となりましたが、今週のヴィクトリアマイルはどんな結果となるでしょうか!?