プロ馬券師・双馬毅氏が実践例を交えながら馬券理論を解説する『双馬毅の“ローテ×血統”錬金術』。今回は牡馬クラシックの予想に大きく影響しそうな共同通信杯ときさらぎ賞の評価について。
なお、『競馬放送局』では双馬氏の推奨レース(予想)、特選リストを公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください!
──前回の予告通り、今回は共同通信杯の評価をお願いします。
双馬:対比が面白いので、共同通信杯だけでなく、きさらぎ賞の評価もしておきましょう。
<共同通信杯>
双馬:1、2着馬が強かったというのが率直な感想で、この世代の2~3歳戦で一番のハイレベルレースになりました。走破タイムが1分48秒0で同日の3歳未勝利より1.8秒も遅いので、疑う人もいるかもしれませんけど。
──「走破タイムでの能力比較は無意味」、「間違った物差しは間違った結果を呼ぶ」という話は、前回でも触れていましたね。どうしてそれだけ高評価するのか? 理由を教えてください。
双馬:まず前回お伝えしたように、強いと思っているパワーホールが展開にも恵まれたのに、上に2頭もいるわけですから、評価しないわけにはいきません。
勝ったジャスティンミラノはそもそも新馬戦がハイレベルでした。2着だったヘデントールは次走で勝ち上がり、このコラムでも「皐月賞の穴候補」と紹介した馬ですから(第139回参照)。この時のラスト2Fは10.8-11.3でしたけど、このラップで完勝できるんですから、こんなにキレ味のあるキズナの牡馬は稀です。
──双馬さんは以前から「キズナの牡馬は33秒台の上がりを要求されるとキレ負けする」と言っていますよね。
双馬:新馬戦が上がり33秒4、共同通信杯が上がり32秒6ですから、キズナ牡馬のイメージを完全に超越しています。血統表を見ると、母系がDarshaan、Sir Ivor、Sir Gaylordなど瞬発力の塊みたいな血統構成なので、その影響でしょう。瞬発力はこの世代でトップレベルです。
ただ、ドスローの2戦しか経験していないので「クラシックでも大丈夫」とまでは言えません。母父がデインヒル系で短縮ローテの方が良いタイプでもありますからね。有力候補の1頭であることは間違いないですけど、そういう不安はあります。
──2着に負けたジャンタルマンタルはどう見ていますか?
双馬:初めての延長ローテだったので評価を下げましたが、折り合いを欠きながら上がり32秒6を出せるんですから、やはり強いんでしょうね。普通だったらエコロヴァルツみたいに折り合いを欠いて負けるんですよ。
デイリー杯2歳Sと朝日杯FSはレベルが低かったので、ジャンタルマンタルがどれだけ強いか分からなかったんですけど、今回はちゃんと強い馬がいたので、ようやく実力を測ることができました。初めての延長ローテでこれくらい走れるなら、自信を持ってG1馬と言えるレベルです。
──ということは、ジャンタルマンタルはクラシックでも中心視できるということですね?
双馬:完全にアメリカンな血統ですから、いつものタフな皐月賞なら良くないんですけど、軽い馬場だったら良いと思います。ここ最近の中山は軽いですからね。雨が降らずにこのままいけば軽くなる可能性はあります。
臨戦過程も朝日杯FSで厳しい流れを経験して、今回延長ローテで折り合いを欠くことも経験していますから、悪くありません。クラシックにおいて、距離が延びるかもしれないと思いながら走る馬と、同じ距離だろうと思って走る馬の差は大きいですからね。
──他の馬についても聞かせてください。
双馬:2番人気だったミスタージーティーは今回は馬場も展開も向かなそうだと思っていましたが、やはりその通りでした。
だいたいミスタージーティーが人気になっているのもちょっと意味不明なところがありましたよね。「ホープフルSは直線で追えていないから、本当なら3着まで来ていたはずだ。だからここだと一番強いんだ」という論調があってだと思うんですけど。
──たしかに、そういう見解はいくつか見ました。
双馬:でも、ミスタージーティーって前に行けないじゃないですか。スローペースのキレ味勝負になりそうなここでは積極的に狙えません。血統も父ドゥラメンテ、母父サドラーズウェルズですから、キレ味勝負がベストではないですし、短縮ローテですから位置取りが下がりますよね。
──結果的に、見せ場もなく7着に負けてしまいました。
双馬:でも、この結果で評価を下げるべきではありません。ここでは「みんなが速い上がりを使えるレースは得意じゃないんだな」と思えば良くて、「上がりがかかるところで脚を使うのが得意なんだろうな」って覚えておけば、他のレースで狙えるんです。
──ミスタージーティーの半兄サトノルークスも、ディープ産駒なのに33秒台の脚を使うような馬じゃありませんでしたよね。
双馬:半姉タッチングスピーチも半兄ムーヴザワールドもすごい上がりを使っているように見えて、33秒7とか33秒8までしか出せていませんでした。タッチングスピーチがミッキークイーンに勝ったローズSはものすごく強かったですけど、あの時の上がりだって33秒9ですから。みんながバテているときに伸びる能力が高い一族なんです。
──ミスタージーティーにはいつか馬券でお世話になりそうですね。
双馬:良い馬なのは間違いないですからね。それを揺るがずに持っておけるかどうかです。「ここで負けたから弱い。ということは、ホープフルも低レベルだったんじゃない?」となると、すべてが食い違います。ホープフルSより朝日杯FSのほうがレベル高いんだと思ってしまうと、能力比較が狂ってきます。レガレイラが弱いってことはありませんから。
──前回おっしゃっていた「能力比較は敗因を踏まえてやらないと意味がない」というやつですね。では、エコロヴァルツ、ショーマンフリート、ベラジオボンドについても一言ください。