競馬評論家・TAROによる、騎手の分析を中心にした回顧&展望コラムです。なお、『競馬放送局』ではTAROの厳選勝負レース(予想)を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください!
先週のワールドオールスタージョッキーズ(以下:WASJ)は本当に面白かったですね。やはり抽選で騎手が決まるという仕組みは新しい発見がありますし、未知なる外国人騎手が多数参戦することで、他のレースも新鮮なものになりました。
個人的に注目していたのはテオ・バシュロ騎手。先週の当コラムで、
「ロードマックスは鮫島駿騎手からバシュロ騎手へ乗り替わり。しかし、優しく溜めてこそ脚を使える馬だけに、果たしてテン乗りの外国人騎手でどうなるか。あまり強気に出るとまったく伸びない可能性もありそうです」
と懸念を指摘しましたが、やはり早仕掛けになり13着と惨敗。レース後のコメントでは、
「結果として仕掛けが少し早かったかもしれません。コーナーを回る際に力を使ってしまいました」
とのことでした。ただ、これは仕方ないんですよね。なぜなら、欧州にはあんなキレキレのディープ産駒はいないわけです。
キレキレというのをもう少しわかりやすく説明すると、少し促すとすぐにトップギアに入ってしまう、ということです。欧州の馬は基本的に気合いをつけて徐々にギアが上がっていきますが、日本のディープ産駒の切れ味タイプはすぐにトップスピードに入ってしまう。だから、欧州でのいつもの感覚で騎乗すると、思いのほか早く反応してしまい、ラストで止まってしまうわけです。
だから、バシュロ騎手が下手なのではなく、合わないということです。騎手は上手いか下手かではなく、合うか合わないかが大事なので、まさにそれを示してくれました。
なお、いかにも合いそうだったのは、その直後に騎乗したWASJ第4戦のアインゲーブング。こちらはゴールドシップ産駒で、追えば追うほど伸びる持久力型。バシュロ騎手には合っていました。結果は8番人気1着、来日初勝利を飾りました。アインゲーブングは過去にもデムーロ騎手騎乗時は2戦していずれも馬券圏内に好走しており、外国人騎手向きなのでしょう。
騎手も馬も個性はいろいろ。だからこそいろいろ「試す」ことが大事なのだと思います。同じ騎手がずっと騎乗しているとワンパターンになりがちで、結果的に眠っている個性を引き出せないまま終わってしまうこともある。したがって、どんどん乗り替わりが起こればいいと考えているのですが…。
現状、日本競馬では乗り替わりというとややネガティブなイメージになってしまっています。ある意味で、その乗り替わりを強制的に行ってくれるのがWASJ。3年ぶりの開催を存分に楽しませてもらいました。
~今年重賞5勝! 存在感増す岩田父~
さて、今週取り上げるのは、岩田康誠騎手です。
ディープブリランテでダービーを勝ち、ジェンティルドンナで主要レースを根こそぎ持って行った2012年からもう10年の月日が経つんですね。あの頃は日本競馬のメインストリームにいたジョッキーですが、今や立場も変わりました。
しかし、存在感はむしろ増している。今年に入って重賞はなんと5勝! そんなに騎乗数が多いわけではなく、24戦5勝ですから重賞での勝率は20%超。例えば最近頑張っているように見える三浦騎手は28戦1勝。言わずもがなの歴然の差です。
▼2022年重賞成績
岩田康誠(5-1-2-16)
三浦皇成(1-2-0-25)
さて、そんな岩田康誠騎手ですが、基本的にはかつてのイメージ、
「バキューン!」
「イン突き」
が今でも通じます。バキューンは脚を溜めて直線で一気に吹かして末脚を活かす。イン突きは文字通り、かつてジェンティルドンナでオルフェーヴルを吹っ飛ばしたジャパンカップのような、馬群を果敢に突く騎乗です。
ただ、最近むしろ馬券的な旨味は…
「外枠の岩田康誠」
ですね。イン突きというイメージからはどうしても内枠が良いように思えますが、外枠でも侮れないのが岩田父流。早速その内容を解説します。