競馬評論家・TARO氏による、騎手の分析を中心にした回顧&展望コラム『TAROのジョッキーズファイル』。今回取り上げるのは「永島まなみ騎手」です。
なお、『競馬放送局』ではTARO氏の厳選勝負レース(予想)を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください!
先週末のフローラSは菅原明騎手騎乗のゴールデンハインドが逃げ切り勝ち。菅原明騎手は個人的に今年最も注目している騎手です。イン有利の馬場でキッチリ立ち回れますし、巨漢馬カラテをビッシリ追ってくるスタミナやパワーもある。
今年の重賞に限っても、最内枠から最高の立ち回りを見せ15番人気2着と激走したディヴィナシオン(オーシャンS)や、不利な外枠から追い込んできたラーグルフ(中山記念)など、活躍が目立っています。
キッカケ一つでさらに上を目指せるジョッキーだと思うので、今年はG1戦線でもまた一撃に期待したいところです。
さて、今回は新規ジョッキーについて考えてみようと思います。ターゲットは、先日福島リーディングを獲得、勢いのある永島まなみ騎手です。
永島まなみ騎手は2021年デビューの現在3年目。父が園田の騎手(現調教師)だったこともあり、小学生のころにジョッキーを目指したとのこと。デビューした2021年は7勝に終わり、2022年も上半期は6勝と苦しんだものの、7月以降に15勝の活躍。今年に入ってからは既に14勝を挙げ、順調ならば昨年以上の成績を残してくれそうです。
~直線競馬で魅せた「ファンタジスタの片鱗」~
最近の活躍で話題に上る機会も増えてきた永島騎手ですが、最初に大きなインパクトを与えたのは昨秋の新潟競馬ではないでしょうか?
10月16日(日)の新潟7Rでセルレアに騎乗した同騎手は、最内枠という直線競馬において絶望的な状況から、ただ1頭内ラチ沿いに促して外の各馬を完封。15番人気での勝利は間違いなく騎手の判断によるものでした。
一昨年のアイビスSDでバカラクイーンが内ラチ沿いを先行して3着に粘り話題になった、
「直線競馬のラチ沿い戦法」
ですが、わかっていてもそう簡単にできることではありません。
しかも、永島騎手は事前に深山調教師に『もしも内枠だったら、内ラチを頼りに走るというのも選択肢のひとつとしてある』という考えを伝えていたとのことです。
▼参考/中山馬主協会
キャプテン渡辺の WINNER’S CIRCLE
当然、そこには開幕週だからこそ内ラチがまだ走りやすいという計算もあったようですが、考えるに至ってもそれを実行できるのは勇気や信念があってこそ。話題の女性ジョッキーの一人ではなく、
「イチかバチかの魅せる騎乗ができるファンタジスタ」
としての片鱗を見せたレースだったと思います。
~背景にあるあの名手の助言~
そう考えてみていると、永島騎手はこれといった定まったスタイルがなく、逃げ差し自在で巧みな印象があります。
もちろん、女性騎手らしい当たりの柔らかさと軽量を活かした逃げ先行が基本なのですが、例えば福島開催で騎乗した5番人気ヤマニンループでの勝利は見事でした。スタートでスッと下げて道中は最後方追走。コーナーで徐々に押し上げて、通常なら直線は外へ…と考えそうなところでしたが、永島騎手はもうひと溜めして最内枠に進路を取ると見事にラチ沿いを突き抜けます。
また、冬の小倉で騎乗した10番人気コイニョウボウとのコンビでは、各馬が荒れたインを避ける中、最内枠を活かして誰も通らない内を狙って差し切り勝ち。直線競馬以外にも思い切りの良い騎乗を随所に見せ、穴馬を持ってきています。
誰も通らないラチ沿いを狙ったり、最後方から思い切ってインを突いたり…と考えると、そこに見えてくるのはあの名手の影です。