競馬評論家・TARO氏による、騎手の分析を中心にした回顧&展望コラム『TAROのジョッキーズファイル』。今回のテーマは「小林美駒騎手の特徴・狙いどころ&中山記念展望」です。
先週の当コラムで「枠並びがカギ」と書いたペプチドナイルでしたが、最高の枠順・並びだったので迷わず本命。どう転んでも3着は外さないだろうと思ってみていたのですが、最高のスタートから一生懸命引っ張るという、久々に見た驚くほどつまらない騎乗で久々にジョッキーに対して呆然としました。
特に騎手のアシストに期待していた本命でもなかったので怒りはなかったですが、改めて乗り役は大事だなと痛感した次第。いろいろ考えた風のレース後コメントも虚しく響くばかりで、ほろ苦いフェブラリーSになってしまいました。
もっとも、藤岡佑騎手自身は今年比較的調子が良いように思えるので、今回の件で負の感情を持たずに、フラットに考えていきたいですね。G1の人気では買いづらい騎手だというコトが改めてわかったというのが教訓です。そういう点で、4番人気に留めた大衆の勝利でもありました。そう、私は大衆に負けたのです…。
「ジャックドールの教訓を忘れたのか!」
と自らに言い聞かせねば。我ながら情けない。
それはさておき、勝ったコスタノヴァのキング騎手は最高の立ち回りで、結果的に展開も向きましたね。そしてもっとも痺れたのは2着のサンライズジパング=幸騎手。距離短縮で苦しい位置取りになったのはやむを得ないと思ってみていたのですが、そこから渾身のイン突き。土曜の重賞制覇といい、やはりベテラン健在。芝の荒れ馬場やダートでは大いに力を発揮します。
後述しますが中山記念は信頼するジョッキーを買うことになると思うので、どんな結果であれ気持ちよくみられそうです。
~強気こそが生きる道! 小林美駒騎手~
今週は3年目の小林美駒騎手を取り上げます。小林美騎手は新潟県出身の3年目。アイビスサマーダッシュを現地で観て騎手を目指したということで、勝ちたいレースもアイビスサマーダッシュ。このプロフィールは大いに参考になりそうです。
憧れの騎手は横山武史騎手。所属が同じ鈴木伸尋厩舎の先輩が横山武騎手なので、その縁もあるのでしょう。
さて、その特徴ですが、これはもうひと言で言い切っていいでしょう。
「徹底逃げ先行型」
そう、小林美騎手はまさに我々がイメージする若手騎手の保守本流の王道といいましょうか、徹底先行スタイルです。最近は高杉騎手のような技術も備えた新人らしからぬ柔軟性のあるタイプも増えてきた中で、ある意味イメージ通りの徹底先行型の若手騎手にはどこか安心感と懐かしさすら覚えます。
これまでデビュー以来31勝を挙げていますが、その勝利の内訳は以下の通り。
▽小林美騎手×初角位置取り別勝利数
初角先頭:17勝
初角2番手:6勝
ご覧の通り、31勝中23勝が最初のコーナーを2番手以内で回って来てのものです。減量を最大限に生かした徹底先行型と読み解くことができます。ちなみに人気薄での好走を見てもやはり逃げ先行が大半。
勝ち星が増えていくと徐々に控える競馬を心掛ける騎手も多いですが、その点小林美騎手は2025年正月のインタビューにおける、「騎乗の時に心がけていることは何ですか」という質問に対し、
「(前略)軽さを生かして積極的にポジションを取ろうと思っています。スタートの良さは出したいです。まだまだ引き出しは少ないんですが、まずはこのスタイルで結果を出していきたいと思っています」(※)
※参考 スポーツ報知
20歳迎える小林美駒騎手 新年の誓い「女性ジョッキーで一番」になる! K―POPの推し活に夢中
と答えているので、当分はこのスタイルを貫くはずです。
~ダート×外枠を狙え~
そんな徹底先行スタイルは枠順傾向にハッキリと現れています。
「ダートの外枠を狙え」
これが基本。以下のデータをご覧ください。
▽ダート戦の小林美駒騎手×枠別成績
1~2枠(0-3-3-68)
3~4枠(2-8-8-69)
5~8枠(15-11-10-157)
ご覧の通り、かなりハッキリとダートの内枠が苦手で、外枠時の好走が多くなっています。ダートは基本的に逃げ先行馬が有利ですが、内枠に入ると被される、包まれる、スタートのミスを取り返せないなどリスクも大きい。また最近はJRAダートにおける内枠不利な馬場も増えていますから納得の傾向でしょう。
小林美駒騎手は、ダートの外枠先行が1つの狙いどころです。