競馬評論家・TARO氏による、騎手の分析を中心にした回顧&展望コラム『TAROのジョッキーズファイル』。今回のテーマは「決め打ちのベテラン・吉田豊騎手&大阪杯徹底展望」です。
高松宮記念は最終的に本命に推した◎サトノレーヴが、モレイラ騎手に導かれて勝利。ただ、それ以上にモレイラ騎手らしさを見ることができたのは土曜の日経賞、チャックネイトでしょう。
普通4コーナーであれだけ前にいる馬がいると加速に手間取るものなのですが、そこはモレイラ騎手。本当に馬群を捌いて来るのが上手いんですよね。しかも減速しない。一時、股関節のケガの影響があるのかなと思う時期もありましたが、今回は万全のようですし、今週以降も期待大ですね。
~マーチSのポイントはあのベテラン騎手のスタイル~
もうひとつ、先週ジョッキー視点で興味深かったのはマーチSでした。ダート無敗で人気を集めたロードクロンヌが最内枠から先行しますが、そこに絡んでいったのが7枠13番のピュアキアン。何が何でもという姿勢でハナに行ったため、1コーナーまでに脚を使ったロードクロンヌにとっては、
「アクセル→ブレーキ→アクセル」
のような競馬になり、結果最後の直線で苦しくなりました。むしろよく3着に粘ったといえる内容で、重賞はすぐ勝てそうです。
ココでポイントになるのは、ピュアキアンの鞍上が吉田豊騎手だったことです。吉田豊騎手はもう大ベテランの域に入りましたが、今でも決め打ち系ジョッキーとして健在。
近年はパンサラッサで存在感を示しましたが、同馬の持ち味を引き出したのは吉田豊騎手の思い切りの良さ。とにかく逃げでも追い込みでも、こうと決めたら最後までやり切る覚悟と実行力があるので、ちょっとやそっとではブレないんですね。
パンサラッサは何が何でも逃げを貫きましたし、逆に追い込みで存在感を見せたのはアルゼンチン共和国杯のハヤヤッコでしょう。最近の活躍例をみても、逃げや追い込みが多数見られます。
▽逃げの吉田豊
メイショウテンスイ
→久々騎乗のジュライSで思い切って逃げてそのまま押し切り、6番人気で勝利
ハヤヤッコ
→思い切った最後方待機から追い込んで10番人気を覆しアルゼンチン共和国杯を制覇
レッドヴェイロン
→低迷していた同馬を追い込みで復活させ3戦連続穴好走
ニットウバジル
→2着6回と詰めの甘さが目立っていたが、吉田豊騎手の溜める騎乗で持ち味を発揮しコンビで3戦2勝
とにかく何か足りない馬を思い切った作戦で最大限にポテンシャルを引き出すのが得意技。ピュアキアンは今どき珍しいデビューからの全戦コンビ騎乗で、徹底的に逃げを貫き、これまでの4勝もすべて逃げ切り。
マーチSにおいても外から切れ込んで逃げることは想定できたので、1コーナーまでに少し脚を使ったロードクロンヌの藤岡佑介騎手は、もう少し吉田豊騎手の特徴を叩き込んでおけば…と思える騎乗でした。レース後はそれも想定内っぽいコメントをしているのですが、弁が立つジョッキーですからね。
騎手のコメントって案外アテにならなくて、弁が立つジョッキーだとそれらしいことを言えてしまう。騎手に限らないですが。結果がすべてでもあるので、馬は強かったと思います。
念のため、別に腹いせで書いているわけではなく、個人的にも最内枠と騎手が不安だったのでロードクロンヌは予想でも5番手評価。むしろよく3着に粘ったと思います。
いずれにしても、決め打ち男の吉田豊騎手。狙うときはもちろん、展開を考える上でも結構わかりやすいです。今後も上手く付き合っていきたいですね。
最近だと、ダイシンヤマト、カンパニョーラ、この2頭は手が合っているように思えるので、今後も出走してきた際は注目してみてください。まだまだ活躍するはずです。
~大阪杯の展望~
さて、今週は大阪杯が行われます。舞台となる阪神芝2000mは、クラシックで問われる末脚の鋭さとはまた別の能力を問われる舞台なので、各馬の特徴、そして騎手の個性から狙いを探っていきましょう。