米三冠レースは、ケンタッキーダービー(米GI・ダ10ハロン)、プリークネスS(米GI・ダ9.5ハロン)、ベルモントS(米GI・ダ12ハロン)の順に行われる。春から秋にかけて行われる日本の三冠とは違い、5月の第1土曜日からわずか5週間で3レースが行われる強行軍だ。
すべてのレースにベストコンディションで臨むことは難しいため、馬の状態を見極めながら、使うレースとスキップするレースを考える必要がある。その見極めの上手い陣営が勝利を掴むことは珍しくない。
5月15日に行われた第146回プリークネスS(レース映像)は、中団を追走した5番人気のRombauerが直線で豪快に抜け出した。4月3日にキーンランド競馬場で行われたブルーグラスS(GII・ダ9ハロン)で3着に敗れたあと、ケンタッキーダービーをスキップし、万全の体調でここに臨んだことが功を奏したといえる。
今回2着のMidnight Bourbon、3着Medina Spirit、4着Keepmeinmindは、いずれも前走ケンタッキーダービーに出走し、それぞれ6着、1着、7着。消耗を避けてプリークネスS一本に狙いを絞ったRombauer陣営の作戦勝ち、という部分も大きかったと思われる。
管理するマイケル・マッカーシー調教師は、もともとトッド・プレッチャー調教師(エクリプス賞最優秀調教師を7回受賞した名伯楽)のアシスタントトレーナーで、そこから独立してCity of Light(ペガサスワールドC、BCダートマイル)などを管理した。
Rombauerの馬体重は不明だが、映像を見るかぎり相当な小兵であることは間違いなく、おそらく400kgそこそこしかないと思われる。勝ち目に乏しいケンタッキーダービーを走らせて使い減りするリスクを冒すよりも、フレッシュな状態で二冠目に挑ませたほうが勝算がある、と考えたのだろう。このクレバーな判断がRombauerのクラシック制覇をもたらしたと見ていいのではないか。
父Twirling Candyは現役時代にマリブS(米GI・ダ7ハロン)など4つの重賞を制覇。マリブSの勝ち時計は1分19秒70と速く、他に芝のGIIも勝っていることから、日本向きの匂いもする種牡馬だ。Rombauer以外にGift Box(米GI・サンタアニタH)、本邦輸入繁殖牝馬フィンレイズラッキーチャーム(米GI・マディソンS)などを出している。父はアルゼンチン出身のCandy Ride(亜米で通算6戦全勝。Gun Runner、Shared Belief、Game Winnerなどの父)。父系はFappianoを経てMr.Prospectorにさかのぼる。
母Cashmereは不出走馬だが、2代母Ultrafleetはカルティエ賞年度代表馬に輝いたRoaring Lion(エクリプスS、愛チャンピオンSなどGIを4勝)の3代母でもある。