6月4日、イギリスのエプソム競馬場で行われた第243回ダービー(GI・芝12ハロン6ヤード)は、好位の外を追走したDesert Crownが残り2ハロンで楽に抜け出し、Hoo Ya Mal、Westoverの追撃をしりぞけて快勝した。勝ちタイムは2分36秒38(馬場状態Good)。(※レース映像)
勝ったDesert Crownは通算3戦全勝。昨年11月にノッティンガムのデビュー戦を快勝したあと、シーズンオフを挟んで今年5月のダンテS(GII・芝10ハロン56ヤード)を連勝。この勝ちっぷりが良く、今回は1番人気に推されていた。
手綱を取ったリチャード・キングスコート騎手は35歳。イギリスの中堅ジョッキーで、Brown Panther(イングランド代表にもなった元サッカー選手のマイケル・オーウェンが所有)とのコンビで愛セントレジャー(GI・芝14ハロン)を制したことがある。管理するサー・マイケル・スタウト調教師は76歳の大ベテラン。女王陛下から“サー”の称号を受けたイギリス調教師界の重鎮で、これが6回目の英ダービー制覇となる。以下はそのリスト。
1979 Shergar
1986 シャーラスタニ
2003 Kris Kin
2004 North Light
2010 ワークフォース
2022 Desert Crown
生産したストロベリーフィールズスタッドは、ニューマーケットの近くに位置する1970年創業の牧場で、これまでに香港の重賞を勝ったFlying Thunderなどを生産している。馬主のサイード・スハイル氏はPoet’s Word(キングジョージ6世&クイーンエリザベスS、プリンスオブウェールズS)、Dream of Dreams(ダイヤモンドジュビリーS)などを所有したことがある。
父Nathanielは、女傑Enable(凱旋門賞2回、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS3回、英・愛オークスなど)の父として知られ、現役時代にキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英GI・芝12ハロン)、エクリプスS(英GI・芝10ハロン7ヤード)などを制している。「Galileo×Silver Hawk+Tom Rolfe」というスタミナと底力の塊のような血統構成で、それゆえにアベレージの面では物足りなさはあるものの、当たりの産駒はとことん強い、というタイプだ。Enable、Desert Crownのほかに、Channel(仏オークス)、Lady Bowthorpe(ナッソーS)などを出している。
母Desert Berryは「Green Desert×Distant View」という組み合わせで、スピードを取り込んでいる。Galileo系は、New ApproachやFrankelのように、現役時代に10ハロン以下で活躍したスピード型のラインに勢いがあるので、Desert Crownの配合の方向性は悪くない。
ワールドサラブレッドランキングのレーティングは122(7/15発表では123)。2016年以降、英ダービー馬に与えられたレース直後の数値としては最も高い。
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栗山求
1968年生まれ。大学在学中の1989年に競馬通信社入社。血統専門誌『週刊競馬通信』にコラム「血統SQUARE」を7年間連載しつつ編集長を務める。1997年に退社後はフリーランスに。編集者や執筆者として携わった雑誌・書籍は数知れず。2010年に株式会社ミエスクを立ち上げて代表取締役に就任。翌年から血統・配合の競馬総合サイト『血統屋』の運営を開始し、牧場・馬主向けの配合コンサルタント業を本格化させる。2012年から『パーフェクト種牡馬辞典』(自由国民社)を望田潤氏らと共同執筆で上梓。2016年に『血統史たらればなし』(KADOKAWA)を刊行。月刊誌『優駿』(JRA)やクラブ法人の会報各誌に連載を持ち、『KEIBAコンシェルジュ』(グリーンチャンネル)などのテレビ出演もこなす。