7月28日、英グッドウッド競馬場で行われたサセックスS(英G1・芝8ハロン)は、中団の外を追走した3歳牝馬Alcohol Free が力強く伸び、1番人気Poetic Flareを交わして優勝した。(※レース映像)
3歳と古馬が激突する夏の英マイル王決定戦。今年は古馬の代表格パレスピアが血液検査の数値が悪いとのことで回避したため、3歳馬が上位人気に推され、結果もそのとおりワンツースリー独占となった(3着は英G1ファルマスSの勝ち馬Snow Lantern)。牝馬の勝利は04年のSoviet Song以来17年ぶり。牝馬限定のロートシルト賞(仏G1・芝1600m)が近い時期に行われるため、サセックスSに牝馬が出てくること自体が稀、という事情がある。
昨年秋にチェヴァリーパークS(英G1・芝6ハロン)を勝ち、3歳緒戦のフレッドダーリンS(英G3・芝7ハロン)も快勝したものの、1番人気で臨んだ英1000ギニー(G1・芝8ハロン)は伸びきれずMother Earthの5着。その後、コロネーションS(英G1・芝7ハロン213ヤード)1着、ファルマスS(英G1・芝8ハロン)3着、サセックスS(英G1・芝8ハロン)1着と、交互に勝ちと負けを繰り返している。馬場コンディションが堅良の英1000ギニーとファルマスSで敗れ、馬場が渋ったコロネーションSとサセックスSで勝っているので、ソフトな馬場が合うタイプといえる。
「No Nay Never×ハードスパン」という組み合わせで、5代母Special Accountはプレイメイト(Woodmanなどの母)やNumbered Account(Private Accountなどの母)の全姉妹にあたる良血。父No Nay Neverは早世した名種牡馬Scat Daddyの仔で、現役時代にモルニ賞(仏G1・芝1200m)など3つの短距離重賞を勝った。Sadler’s Wellsもデインヒルも持たない血統構成がセールスポイント。Ten Sovereign(ジュライC、ミドルパークS)など初年度産駒の活躍により英愛ファーストシーズンサイアーチャンピオンとなったが、3歳以降は伸び悩む仔が目立ち、早熟タイプという評価が定着しつつあった。しかし、日本のユニコーンライオン(鳴尾記念、宝塚記念-2着)が5歳にして本格化したことに加え、Alcohol Freeがこの先も活躍することができれば、そうした評価も是正されていくかもしれない。
8月15日、仏ドーヴィル競馬場で行われたジャックルマロワ賞(仏G1・芝1600m)は、人気を集めたPalace PierとPoetic Flareの争いとなり、前者がクビ差先着を果たした。(※レース映像)
今シーズンの欧州競馬はどのカテゴリーでも3歳馬優勢の傾向が見られるが、ここは古馬最強マイラーが貫録を見せ、3歳牡馬の強豪を打ち破った。通算成績は10戦9勝。昨年秋のクイーンエリザベスS(英G1・芝8ハロン)で3着と敗れたほかはすべてのレースを制している。今シーズンはこれで4連勝だが、前3走と比べてギリギリの勝利だったのは、やはり血液検査の数値が悪いとの理由でサセックスSを回避した影響があったのかもしれない。
もちろん、2着Poetic Flareも、サセックスS、ジャックルマロワ賞と連続2着と健闘し、その前には英2000ギニー(G1・芝8ハロン)とセントジェームズパレスS(英G1・芝7ハロン213ヤード)を制している。決して弱い馬ではない。
父Kingmanは通算8戦7勝(2着1回)。鋭い決め手を武器にジャックルマロワ賞(仏G1)、セントジェームズパレスS(英G1)、愛2000ギニー(G1)などを制し、カルティエ賞年度代表馬、最優秀3歳牡馬に選出された。種牡馬としても大成功し、Persian King(ムーランドロンシャン賞、仏2000ギニー、イスパーン賞)、Domestic Spending(マンハッタンS、ハリウッドダービー)、シュネルマイスター(NHKマイルC)、エリザベスタワー(チューリップ賞)などを出している。母国イギリスだけでなく、アメリカや日本など時計の速い芝でも一流馬を出しているところが素晴らしい。
母Beach Frolicは不出走だが、その半姉にJoviality(英G2ウインザーフォレストS、英G3ミュージドラS)、半兄にBonfire(英G2ダンテS)がいる。
母の父Nayefはディープインパクトの近親で、なおかつ父Kingmanはディープインパクトとニックスの関係にあるダンシングブレーヴを持つので、いずれ種牡馬となった際に、ディープインパクトを抱えた繁殖牝馬と好相性を示すのではないかと思われる。もちろん、上記のNo Nay Neverと同じく、Sadler’s Wellsもデインヒルも持たない血統構成なので、欧州で引く手あまただろう。
8月17日現在のクイーンエリザベス2世S(英G1・芝8ハロン)の前売りオッズ(英ブックメーカーbet365)は以下のとおり。
・Palace Pier (3.25倍)
・Baaeed (3.75倍)
・Alcohol Free (7倍)
・The Revenant (8倍)
・Poetic Flare (8倍)
・Master of The Seas (13倍)
・St Mark’s Basilica (10倍)
・Lady Bowthorpe (15倍)
※以下略
Palace Pierに迫る2番人気に推されているのは3歳牡馬Baaeed。7月30日、英グッドウッド競馬場で行われたサラブレッドS(英G3・芝8ハロン)を6馬身半差で楽勝した。通算4戦全勝。(※レース映像)
ディープインパクトやNayefと同じくHighclere牝系に属し、父はSea the Stars。血統的にも魅力十分だ。