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栗山求の海外競馬トピックス 10/18 (月)

凱旋門賞、チャンピオンS、クイーンエリザベス2世S/栗山求の海外競馬トピックス

10月3日、パリロンシャン競馬場で行われた凱旋門賞(仏G1・芝2400m)は、中団を追走したドイツ調教馬Torquator Tassoが外から伸び、Tarnawaを交わして優勝した。(※レース映像)

ドイツ調教馬の勝利は2011年のDanedream以来10年ぶり、通算3回目となる(初優勝は1975年のStar Appeal)。Torquator Tassoは昨年のドイツ年度代表馬で、これまでにベルリン大賞(独G1・芝2400m)、バーデン大賞(独G1・芝2400m)などを制している。ドイツ国内の競馬でしか走った経験がなく、国際舞台ではその実力は未知数。したがって、知名度も低く、例年よりもハイレベルなメンバーが揃った今年の凱旋門賞では泡沫候補扱いだった。道悪が大きな助けとなったのは間違いない。

父AdlerflugはSadler’s Wells系で、2020年の独リーディングサイアー。Torquator Tasso自身はAlya=Allegretta 3×4という鮮やかな全姉妹クロスを持つ。Allegrettaの息子であるGalileo、Sea the Stars を使わず、直牝系同士を掛け合わせているところがおもしろい。わが国の感覚からすると重厚すぎる血統だが、そうした馬がトップに昇り詰めることができるレース体系、馬場、気候を持っていること、そして偶然では作りづらい全姉妹クロスをピンポイントで作ってくる配合に対する意識の高さ、これらの総体がドイツ競馬の凄みであり財産といえる。

ドイツ競馬は決して財政的に裕福ではなく、英米仏愛の良血馬を購買する頻度は日本よりも低く、サラブレッドの年間生産頭数は1000頭に満たない。逆にいえば、その程度の頭数でも、ドイツ式の馬産はヨーロッパの競馬主要国に劣らぬ馬を10年に1頭程度は作り出せる、ということであり、レース体系、馬場、気候は真似できないとしても、日本競馬が見習う点は大いにありそうだ。

10月16日、アスコット競馬場で行われた英チャンピオンS(G1・芝9ハロン212ヤード)は、好位を追走したフランス調教馬Sealiwayが直線でAdayarを交わして先頭に立ち、後方から迫るDubai Honourを抑えて快勝した。(※レース映像)

MishriffとAdayarの一騎打ちムードだったが、それぞれ4着と5着に沈む大波乱。勝ったSealiwayは3歳牡馬で、昨年秋のジャンリュックラガルデール賞(仏G1・芝7ハロン)以来1年ぶりのG1制覇となった。今年春は仏2000ギニー(G1・芝1600m)8着、仏ダービー(G1・芝2100m)2着という成績だったが、夏を休養に充て、秋初戦の凱旋門賞では休み明けながら5着と好走。そして今回の勝利と、ここに来て大きく成長している。今回は英国式には「Good to Soft」という馬場コンディションだったが、レース映像を見るかぎり馬場がかなり掘れており、実質的にはもうワンランク悪い「Soft」だったのではないかという気がする。名うての道悪巧者であるこの馬にとっては走りやすい馬場だった。

父Galiwayは日本産馬Silent Name(父サンデーサイレンス/2018~20年にカナダのリーディングサイアー)の半弟で、母が日本からイギリスに帰国後、Galileoを交配して誕生した。ホーリスヒルS(英G3・芝7ハロン)で2着となった程度の競走馬で、フランスでの種付け料は日本円でわずか40万円程度。産駒数も多いとはいえないが、供用2年目の産駒から大当たりを出した。「Galileo×デインヒル+Blushing Groom」なのでFrankelと配合構成がよく似ている。

本馬はBlushing Away 3×4という牝馬クロスを持っている。凱旋門賞馬Torquator Tassoと同じく、この配合も明確な意匠によって狙わなければ実現しない種類のものだろう。ちなみに、Blushing Awayはフランスで3頭の重賞勝ち馬を産んだ名繁殖牝馬だ。3歳夏から上昇してきたので、さらに強くなるであろう来年は楽しめそうだ。

10月16日、同じくアスコット競馬場で行われたクイーンエリザベス二世S(G1・芝8ハロン)は、下馬評どおりPalace PierとBaaeedの一騎打ちとなり、外から伸びた後者がクビ差ねじふせてマイル王者の座についた。(※レース映像)

通算10戦9勝の4歳牡馬Palace Pier、5戦全勝の3歳牡馬Baaeed。世紀のマイル王決定戦としてレース前から大きな盛り上がりを見せ、期待どおりの名勝負が実現された。

勝ったBaaeedは今年6月にデビューしたばかり。レスター競馬場でのデビュー戦は、スタートで出遅れて後方に下がり、絶望的な位置取りから弾けるように伸びて快勝。2戦目は7馬身半差、3戦目は4馬身差で勝ち、グループレース初挑戦となった4戦目のボナムズサラブレッドS(英G3・芝8ハロン)は、直線で楽々とリードを広げて6馬身半差の圧勝。G1初挑戦となったムーランドロンシャン賞(仏G1・芝1600m)は外から突き抜けて無傷の5連勝を達成した。

今回はマイル路線に君臨する大物Palace Pierが相手とあって、単勝人気は同馬の2.5倍にわずかに届かず3.0倍だったが、真っ向勝負でねじふせてマイル路線の最強馬論争にけりをつけた。

父Sea the StarsはGalileoの半弟で、種牡馬として大成功しており、これまでにHarzand(英ダービー、愛ダービー)、Taghrooda(キングジョージ6世&クイーンエリザベスS、英オークス)、Star Catcher(愛オークス、ヴェルメイユ賞、英チャンピオンズフィリーズ&メアズS)など多くの大物を送り出している。10ハロン以上を得意としており、近年を代表する名ステイヤーStradivarius(グッドウッドC4連覇、アスコットゴールドC3連覇)の父でもある。

本馬は、Mr.Prospector 4×3・5の影響があるのか、例外的にマイルの大物となった。4代母Bashayerは英二冠馬Nashwan(バゴの父)の半妹で、5代母Height of FashionはBurghclere(ディープインパクトの2代母)の4分の3妹。種牡馬としても楽しみな存在だ。

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栗山求 近影

栗山求

1968年生まれ。大学在学中の1989年に競馬通信社入社。血統専門誌『週刊競馬通信』にコラム「血統SQUARE」を7年間連載しつつ編集長を務める。1997年に退社後はフリーランスに。編集者や執筆者として携わった雑誌・書籍は数知れず。2010年に株式会社ミエスクを立ち上げて代表取締役に就任。翌年から血統・配合の競馬総合サイト『血統屋』の運営を開始し、牧場・馬主向けの配合コンサルタント業を本格化させる。2012年から『パーフェクト種牡馬辞典』(自由国民社)を望田潤氏らと共同執筆で上梓。2016年に『血統史たらればなし』(KADOKAWA)を刊行。月刊誌『優駿』(JRA)やクラブ法人の会報各誌に連載を持ち、『KEIBAコンシェルジュ』(グリーンチャンネル)などのテレビ出演もこなす。

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