10月9日、英ニューマーケット競馬場で行われたデューハーストS(G1・芝7ハロン)は、中団を追走したNative Trailが残り120mで先頭に立ち、Dubawi Legendに2馬身差をつけて圧倒的1番人気に応えた。通算成績は4戦全勝。(※レース映像)
来年の英2000ギニー(G1・芝8ハロン)につながるイギリスの最重要2歳重賞で、過去20年間にロックオブジブラルタル、Shamardal、Teofilo、New Approach、Frankel、Dawn Approach、Churchill、Too Darn Hot、St Mark’s Basilicaといったそうそうたる名馬が勝ち馬に名を連ねている。(※過去のデューハーストS勝ち馬一覧)
Native Trailは、AdayarやHurricane Laneなどと同じく、ゴドルフィン、アップルビー調教師、ビュイック騎手のチーム。6月のデビュー戦を快勝したあと、7月のスーパーレイティヴS(英G2・芝7ハロン)、9月のナショナルS(愛G1・芝7ハロン)、そして今回と無傷の4連勝。ここ2戦は3馬身半差、2馬身差と、2着以下を問題にしていない。約540kgの巨漢馬だが、いまのところ身体を持て余すところは見られない。
父Oasis Dreamは、Muhaarar(カルティエ賞最優秀スプリンター)、Midday(BCフィリー&メアターフなどG1を6勝)、Power(愛2000ギニー、ナショナルS)、Aqlaam(ムーランドロンシャン賞)など多くの活躍馬を出している名種牡馬。Kingmanと血統構成の50%が同一(父Green Desert、母HopeがそれぞれKingmanの2代父、2代母)で、Invincible SpiritとともにGreen Desert系の発展に大きく寄与した。本邦輸入種牡馬シスキンの母の父でもある。本馬は、Mr.Prospector、Roberto、Blushing Groomと、父と相性のいい血が集められている。
Sadler’s Wellsもデインヒルも持たない血統構成は、将来種牡馬となった際に大きなセールスポイントとなりそうだ。ちなみに、Kingmanを父に持つ1歳下の半妹は、8月のアルカナイヤリングセールで95万ドル(約1億2500万円)という高値がついた。前述のとおりOasis DreamとKingmanは血統構成が50%同一なので、本馬と半妹は4分の3兄妹といっても差支えない。G1を連勝する前にこの値段がついたので、もしいまセリが行われれば倍以上の値がつきそうだ。
英ブックメーカー「Bet365」がつけた英2000ギニー(G1・芝8ハロン)の前売り単勝オッズは、現在4倍で1番人気となっている。ただ、英ダービーは9倍の3番人気。「Oasis Dream×Observatory」という血統から12ハロンはさすがに厳しいだろう。
10月8日、英ニューマーケット競馬場で行われたフィリーズマイル(G1・芝8ハロン)は、ニアサイドの2番手を追走した圧倒的1番人気馬Inspiralが残り400mで先頭に立ち、2着Prosperous Voyageに2馬身半差をつけて楽勝した。通算成績は4戦全勝。(※レース映像)
前走、9月のメイヒルS(英G2・芝8ハロン)を3・3/4馬身差で勝って初の重賞タイトルを獲得し、今回は単勝1.7倍の一本かぶりの人気となったが、危なげなく抜け出した。「Bet365」がつけた英1000ギニー(英G1・芝8ハロン)の前売り単勝オッズは4倍で1番人気。チェヴァリーパークS(英G1・芝6ハロン)を勝ったTenebrismが2番人気となっている。
父Frankelは2021年の英愛リーディングサイアーの座を確定的にしている。その父Galileoは13回目のリーディングサイアーこそならなかったが、リーディングサイアーの父になるという新たな功績を打ち立てた。母Starscorpは英1000ギニー2着、コロネーションS(英G1・芝8ハロン)2着という成績がある。3代母Mystic Goddessは、Medicean(アドマイヤマーズの母の父)の母、モントライゼ(京王杯2歳S)の2代母でもある。
本馬はRainbow Questのクロス(4×4)を持つが、この配合パターンから誕生したFrankel産駒には、Finche(仏G2ユジェーヌアダム賞)、Rumi(仏G2ノネット賞)、Fair Eva(英G3プリンセスマーガレットS)などがいる。
父母ともに現役時代マイラーだったが、英オークスの前売りオッズでも1番人気に推されている。ただし、こちらは単勝8倍と、マイルの英1000ギニーほど人気が集中しているわけではない。
2021/11/04 (木)
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栗山求
1968年生まれ。大学在学中の1989年に競馬通信社入社。血統専門誌『週刊競馬通信』にコラム「血統SQUARE」を7年間連載しつつ編集長を務める。1997年に退社後はフリーランスに。編集者や執筆者として携わった雑誌・書籍は数知れず。2010年に株式会社ミエスクを立ち上げて代表取締役に就任。翌年から血統・配合の競馬総合サイト『血統屋』の運営を開始し、牧場・馬主向けの配合コンサルタント業を本格化させる。2012年から『パーフェクト種牡馬辞典』(自由国民社)を望田潤氏らと共同執筆で上梓。2016年に『血統史たらればなし』(KADOKAWA)を刊行。月刊誌『優駿』(JRA)やクラブ法人の会報各誌に連載を持ち、『KEIBAコンシェルジュ』(グリーンチャンネル)などのテレビ出演もこなす。