6月3日、イギリスのエプソム競馬場で行われた第244回オークス(GI・芝12ハロン6ヤード)は、後方に控えたTuesdayが直線で内をすくって抜け出し、外から迫るEmily Upjohnを短頭差抑えて優勝した。勝ちタイムは2分37秒83(馬場状態Good)。(※レース映像)
インコースが荒れていたので、最後の直線で馬群は外ラチ沿いへ。勝ったTuesdayは、外に回ることなくショートカットして最内を突き、まともに走れるギリギリの進路を通って粘り込んだ。ライアン・ムーア騎手の好騎乗がもたらした勝利といえるだろう。
逆に、正攻法で外を回って敗れた1番人気Emily Upjohnにとっては残念なレースだった。騎乗したデットーリ騎手と、管理したゴスデン調教師は、6月24日、7年間にわたるコンビの解消を発表した。ロイヤルアスコットでのデットーリ騎手の騎乗ぶりにゴスデン調教師が不満を抱いた――とされているが、オークスがその遠因のひとつだったという見方もできなくはない。
勝ったTuesdayは、全姉Mindingに続いての姉妹オークス制覇。Mindingは2歳時からGIを勝ちまくり、引退までに英1000ギニー(GI・芝8ハロン)やクイーンエリザベス2世S(GI・芝8ハロン)など7つのGIを制覇した。まだまだ姉の域には及ばないが、これからの成長に期待したいところ。もう1頭の全姉Empress Josephineは昨年の愛1000ギニー(GI・芝8ハロン)勝ち馬。
これら3頭を産んだLillie Langtryは、歴史的名繁殖牝馬といっていいだろう。現役時代にコロネーションS(英GI・芝8ハロン)とメイトロンS(英GI・芝8ハロン)を勝っており、競走馬としても優秀だった。
父Galileoは、2020年の英ダービー馬Serpentine以来2年ぶりの英クラシック制覇。昨年、英愛リーディングサイアーの座を息子Frankelに明け渡し、産駒数も先細りとなっているなかでのこの勝利は、意地の一発というべきか。ちなみにGalileo自身は昨年7月10日に鬼籍に入った。23歳だった。
「Galileo×Danehill Dancer」という組み合わせは、Serpentineと同じで、ほかにCircus Maximus、Alice Springs、Sovereign、The GurkhaなどのGI馬が出ている。
Tuesdayは父にとって5頭目の英オークス馬。ちなみにこのあと、6月25日に愛ダービー(GI・芝12ハロン)に出走したが、牡馬相手ではさすがに厳しく、勝ったWestoverから10馬身以上離された4着に敗れた。
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栗山求
1968年生まれ。大学在学中の1989年に競馬通信社入社。血統専門誌『週刊競馬通信』にコラム「血統SQUARE」を7年間連載しつつ編集長を務める。1997年に退社後はフリーランスに。編集者や執筆者として携わった雑誌・書籍は数知れず。2010年に株式会社ミエスクを立ち上げて代表取締役に就任。翌年から血統・配合の競馬総合サイト『血統屋』の運営を開始し、牧場・馬主向けの配合コンサルタント業を本格化させる。2012年から『パーフェクト種牡馬辞典』(自由国民社)を望田潤氏らと共同執筆で上梓。2016年に『血統史たらればなし』(KADOKAWA)を刊行。月刊誌『優駿』(JRA)やクラブ法人の会報各誌に連載を持ち、『KEIBAコンシェルジュ』(グリーンチャンネル)などのテレビ出演もこなす。