昨年は新型コロナの第一波によって世界中が大混乱に陥っていたため、英2000ギニー(GI・芝8ハロン)もケンタッキーダービー(米GI・ダート10ハロン)も当初のスケジュール通りには行われず、前者は6月6日に、後者は9月5日に延期された。
今年は両レースとも予定通り5月1日に行われた。
英2000ギニーはPoetic FlareとMaster of the Seasの一騎打ちとなり、前者が短頭差で勝利した。通算成績は4戦3勝。昨年10月のキラヴーランS(愛GIII・芝7ハロン)に続く重賞連勝だが、15頭立ての9番人気という伏兵だった。
ケヴィン・マニング騎手、ジム・ボルジャー調教師のコンビは、父Dawn Approach、2代父New Approachと同じ。父は2013年の当レースを制しており、2代父は2008年に当レースでハナ差2着だった。つまり、2代父New Approachがハナ差負けしなければ、3代連続で英2000ギニーを制覇していたことになる。ちなみに、英2000ギニーを勝ち損ねたNew Approachは英ダービーを制覇した。
New Approachの母Park Express(愛チャンピオンS、ナッソーS、ランカシャーオークス)もボルジャー調教師が管理していたので、New Approachのラインを彼以上に理解している人間は世界中を探してもいないだろう。
New ApproachはGalileo産駒。つまり、Poetic FlareはGalileoの直系の曾孫となる。Galileoはまだ種牡馬として現役なので、ひょっとしたらそのうち、Galileoとその曾孫Poetic Flareが同時に供用される可能性がある。
ジム・ボルジャー調教師はアイルランド競馬界を代表する名調教師のひとり。かのエイダン・オブライエン調教師は30年以上前、ボルジャー調教師のもとで調教助手となり、競馬界のキャリアをスタートさせた。クールモアの専属調教師となったオブライエン調教師の実績があまりにも凄すぎるので、ここ十数年はジム・ボルジャーだけでなくダーモット・ウェルド、ジョン・オックスといった、確かな腕を持つアイルランドのベテラン調教師の存在感が薄れた感があった。ボルジャー調教師は今年12月に80歳を迎える。この年齢でビッググレースを勝つのだからやはり並の調教師ではない。
ケンタッキーダービーは、ゴール前で4頭の激しい追い比べとなり、最内のMedina Spiritが半馬身差で逃げ切った。
ジョン・ヴェラスケス騎手、ボブ・バファート調教師は昨年の優勝馬オーセンティックと同じコンビ。49歳のヴェラスケス騎手は通算4回目、68歳のバファート調教師は三冠馬アメリカンファラオ、ジャスティファイを含めて7回目の制覇となる。
勝ったMedina Spiritは西海岸でデビューし、キャリアを重ねてきた。前走のサンタアニタダービー(GI・ダート9ハロン)でRock Your Worldに4・1/2馬身差の2着と完敗していたため、6番人気の伏兵に過ぎなかった。ヴェラスケス騎手が絶妙のペース配分で逃げたことが大きな勝因だろう。ちなみにRock Your Worldは2番人気に推されたものの20頭立ての18着と惨敗している。
父Protonico(父Giant’s Causeway)は現役時代にGIIIを2勝した程度の競走馬で、初年度の種付け料はわずか6500ドル(約70万円)。わずか十数頭の初年度産駒からいきなりケンタッキーダービー馬を出したので、来年の種付け料は大幅に上昇しそうだ。
フロリダ産のケンタッキーダービー馬は1997年のシルバーチャーム以来24年ぶり。ちなみに同馬はバファート調教師が手がけた初のケンタッキーダービー馬だった。
2019年のOBSウィンターミクストセールにおいてわずか1000ドル(約11万円)で落札された記録的な安馬で、その後、2020年秋にOBSオープンセールオブイヤリングスに上場され、3万5000ドル(約380万円)で落札された。
安馬ながら、2代母Bridledは、Dr.Fager≒Great Above 4×3、Charedi≒Ta Wee 3×4というニックスを強化したおもしろい配合なので、いずれ種牡馬となった際、この部分は武器となりそうだ。