競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。
今回のテーマは「世界のオークス」について。
今週末は「優駿牝馬(オークス)」です。1年前の当コラムでは、日本のオークスの歴史や、範をとった英国エプソムのオークスについて取り上げました。(2024.5.16「“オークス”のハナシ」参照)
英国エプソムの“元祖”オークスは今年で247回目という大変長い歴史を持ちますが、「オークス」の名がついていたり、オークスに倣って行われている牝馬限定のレースは世界中に見られます。そこで今回はエプソムオークスや日本の優駿牝馬以外の世界各地で行われている主なオークスをまとめてみました。
(1)ヨーロッパのオークス
▼「ディアヌ賞(フランスオークス)」
(G1/3歳牝馬/シャンティイ競馬場・芝2100m)
第1回英国オークスから64年後の1843年に創設。距離は英国オークスより300m短い。「ディアヌ」とはローマ神話に登場する女神「ディアナ」のフランス語読み(英語読みはダイアナ)。過去、1864年のフィーユドレール(Fille de l’Air)と1976年のポーニーズ(Pawneese)の2頭が英仏オークスダブル制覇を達成。2013年のトレヴなどディアヌ賞優勝馬の6頭がその後、凱旋門賞馬になっている。例年6月に開催。
▼「ヨークシャーオークス」
(G1/3歳以上牝馬/ヨーク競馬場・芝2385m)
英国で2番目の歴史を持つオークスで1849年に創設。夏のヨーク競馬場恒例「イボアフェスティバル」で行われている。当初は3歳牝馬限定戦だったが、1991年から「3歳以上」に変更された。2017年に英愛オークスとヨークシャーオークスを制したエネイブルは2年後、ヨークシャーオークス2度目の優勝を果たした。
▼「ディアナ賞(ドイツオークス)」
(G1/3歳牝馬/デュッセルドルフ競馬場・芝2200m)
1857年にベルリン競馬場・芝2000mのレースとして創設された。過去の優勝馬のうち、1936年のネレイド、“ドイツのSライン”で有名な1940年のシュヴァルツゴルト、1949年のアステルブリューテ、1955年のルステージは、独ダービーとのダブル優勝を果たしている。現在は8月に施行。
▼「アイリッシュオークス」
(G1/3歳牝馬/カラ競馬場・芝12ハロン)
1895年創設のアイルランドのオークス。毎年7月頃開催。
(2)オセアニアのオークス
▼「VRC(ビクトリアレーシングクラブ)オークス」
(G1/3歳牝馬/フレミントン競馬場・芝2500m)
1861年にメルボルンのフレミントン競馬場で創設。現在はスポンサー「クラウンカジノ」の名をとり「クラウンオークス」というレース名で、メルボルンカップ週の木曜日に行われている(メルボルンカップは火曜日)。
▼「オーストラリアンオークス」
(G1/3歳牝馬/シドニー近郊・ロイヤルランドウィック競馬場・芝2400m/1885年創設)
▼「クイーンズランドオークス」
(G1/3歳牝馬/ブリスベン・イーグルファーム競馬場・芝2400m/1951年創設)
▼「ニュージーランドオークス」
(G1/3歳牝馬/ニュージーランド・トレンサム競馬場・芝2400m)
1969年創設。シャトル種牡馬としてニュージーランドで供用されたジャングルポケット産駒のジャングルロケット(2009年)やサトノアラジン産駒のペニーウェカ(2023年)ら日本産種牡馬の産駒も優勝。
▼「オーストラレーシアンオークス」(現在はスポンサー名の「シュウェップス・オークス」)
(G1/3歳牝馬/南オーストラリア・モーフェットビル競馬場・芝2000m/1982年創設)
(3)北米のオークス
▼「ケンタッキーオークス」
(G1/3歳牝馬/チャーチルダウンズ競馬場・ダート9ハロン)
アメリカ最古の「オークス」。「ケンタッキーダービー」と同じ1875年に創設され、ダービーの前日に行われている。ダービー馬がバラのレイをかけられるのに対し、オークスの優勝馬にはユリのレイがかけられる。
▼「CCA(コーチングクラブアメリカン)オークス」
(G1/3歳牝馬/サラトガ競馬場・ダート9ハロン)
1917年、ベルモントパーク競馬場に「コーチングクラブハンディキャップ」として創設。2010年からは同じニューヨーク州のサラトガ競馬場に移った。ニューヨークの競馬がアメリカ競馬の中心だった時代には「CCAオークス」がアメリカ最大のオークスだったことも。「ニューヨーク牝馬三冠」の第2戦。
▼「サンタアニタオークス」
(G2/3歳牝馬/サンタアニタパーク競馬場・ダート8.5ハロン/1935年創設)
毎年4月上旬に行われ西海岸の有力牝馬が集まるケンタッキーオークスに向けてのプレップレース(前哨戦)。
▼「ウッドバインオークス」
(カナダ産馬限定/3歳牝馬/カナダ・ウッドバイン競馬場・AW9ハロン)
1956年創設のカナダ・クラシック牝馬三冠の第1戦。カナダ産馬限定のため国際的格付けを持っていない。
▼「デルマーオークス」
(G1/3歳牝馬/デルマー競馬場・芝9ハロン/1957年創設)
毎年8月に開催。夏の西海岸における芝の3歳女王決定戦。
▼「アメリカンオークスステークス」
(G1/3歳牝馬/サンタアニタパーク競馬場・芝10ハロン/2002年創設)
「アメリカンオークス招待ステークス」の名でハリウッドパーク競馬場の国際招待競走として創設。2005年の第4回は日本のオークス馬シーザリオが優勝した。2010年に国際招待ではなくなり現在名に改称。ハリウッドパーク競馬場閉鎖に伴い2014年からサンタアニタパーク競馬場に変更され、現在は12月に行われている。
▼「ベルモントオークス招待ステークス」
(G1/3歳牝馬/ベルモントパーク競馬場・芝10ハロン)
1979年創設。毎年7月に実施されるBCフィリー&メアターフのプレップレース。2019年から3歳牝馬芝三冠競走「ターフティアラ」の1冠目に位置づけられた。
▼「サラトガオークス」
(G2/3歳牝馬/サラトガ競馬場・芝9.5ハロン/2019年創設)
3歳牝馬芝三冠競走「ターフティアラ」の8月に行われる2冠目。
▼「ジョッキークラブオークス」
(G3/3歳牝馬/ベルモントパーク競馬場・芝11ハロン/2019年創設)
3歳牝馬芝三冠競走「ターフティアラ」の9月に行われる3冠目。
(4)アジアのオークス
▼「コリアンオークス」
(韓国GII/3歳牝馬/釜山慶南競馬場・ダート1800m/2000年創設)
韓国のオークス。
▼「UAEオークス」
(G3/北半球産3歳牝馬、南半球産4歳牝馬/メイダン競馬場・ダート1900m)
ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーオークスの対象レースに指定されているUAEノオークス。
(5)地方競馬のオークス
▼「関東オークス」
(JpnII/3歳牝馬/川崎競馬場・ダート2100m/1965年創設)
60年以上の歴史を持ち、2000年からは指定交流競走に。桜花賞(浦和)、東京プリンセス賞(大井)とともに南関東牝馬三冠を形成。その最終戦として6月に行われている。
▼「ばんえいオークス」
(BG1/3歳牝馬/帯広競馬場200m/1976年創設)
ばんえい競馬のオークス。かつては旭川、岩見沢、北見の各競馬場でも行われていた。
▼「ひまわり賞(オークス)」
(岩手M1/3歳牝馬/盛岡競馬場・ダート1800m/1987年創設)
岩手競馬におけるオークス。2007年の優勝馬マツリダワルツはJRA重賞3勝ロードクエストの母。
まだまだこれら以外にも世界中に存在する「オークス」。今回調べてみて、想像以上にたくさんあることがわかりました。我が国のオークスは今年で86回目。その歴史の重みも感じながら存分に楽しみたいですね。