競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。
今回のテーマは「ダービー父子3代制覇」について。
日曜日はいよいよ日本ダービーです。
去年の当コラムでは「誰が勝っても産駒のダービー初勝利」というテーマを取り上げました。(2024.5.23「誰が勝っても産駒のダービー初勝利」)
去年のダービーを勝ったのはダノンデサイル。産駒がダービー初勝利を果たしたのは父・エピファネイアでした。
今年の出走馬の顔ぶれを見ても、父親が種牡馬としてダービーを勝っているのは、ホープフルSが2着、皐月賞は4着だったジョバンニ1頭だけ。去年、優勝馬を出したエピファネイアの産駒です。
一方、去年も日本ダービー史上初の「父子3代制覇」が懸かっていたキズナ、ドゥラメンテ、レイデオロの種牡馬3頭は、それぞれ今年も産駒の出走があります。
去年は皐月賞馬ジャスティンミラノが1番人気で2着に終わったキズナ産駒。今年は、京都2歳Sの勝ち馬エリキングと、きさらぎ賞の勝ち馬サトノシャイニング、シンザン記念の勝ち馬リラエンブレムの3頭が出走します。
9歳の若さで早世したドゥラメンテは5世代目だった現3歳馬が最終世代です。共同通信杯の勝ち馬マスカレードボール、青葉賞2着のファイアンクランツ、京都新聞杯2着のエムズ、3分の2の抽選対象になっているホウオウアートマンの4頭がエントリーしています。
ドゥラメンテと同じキングカメハメハの後継種牡馬レイデオロの産駒は、共同通信杯2着のカラマティアノスと、抽選対象となっているマイユニバースの2頭がエントリーしています。現3歳は2世代目。去年は初年度産駒のサンライズアースが15番人気の低評価ながら4着と健闘しました。
日本ダービーの過去91回の歴史上「父子制覇」は15例あり、達成した父は7頭です。
このうち2005年のダービー馬ディープインパクトは7頭もの産駒が「日本ダービー父子制覇」を果たしています。ディープインパクト産駒は、2018年にスタディオブマンが仏ダービー(ジョッケクルブ賞)を、2023年にはオーギュストロダンが英国ダービーを制しているのですから、その偉大さは筆舌に尽くし難いほどです。キズナ産駒は、同じディープインパクトの後継コントレイルの産駒がデビューする前に快挙を達成できるでしょうか。
一方、2004年のダービー馬キングカメハメハの産駒で「父子制覇」を達成したのは、今年も産駒の出走があるドゥラメンテとレイデオロの2頭。二冠馬ドゥラメンテにとっては快挙達成の最後のチャンスです。
ところで、250年近くの歴史を持つ英国ダービーでは「父子3代制覇」が8例も達成されています。最近では2018年の英国ダービー馬Masarが、Galileo(2001年)、New Approach(2008年)との「3代制覇」を果たしました。
1836年創設の仏ダービー(ジョッケクルブ賞)では、2023年の優勝馬Look de Vegaが、Shamardal(2005年)、Lope de Vega(2010年)との「父子3代制覇」を達成。仏ダービー史上では5例目だったということです。
これに対し、ケンタッキーダービーの「父子3代制覇」はReigh Count(1928年)、Count Fleet(1943年)、Count Turf(1951年)によるわずか1例だけ。逆に、独自路線のドイツでは、1917年のドイチェスダービー馬Landgrafから枝分かれした系統から、なんと「父子6代制覇」が全部で7例も達成されているのだそうです。
すでに世を去ったディープインパクトとキングカメハメハ。その後継馬たちは、今年、日本競馬の歴史を変える「父子3代制覇」の快挙を達成できるでしょうか。その答えは、まもなくわかります。