競馬キャスター、ならびに単行本「馬場のすべて教えます」の著者としてもお馴染みの小島友実さんによる連載『コジトモの馬場よもやま話』。
今回のテーマは「中山芝」について。長年に渡り“馬場”を取材してきた第一人者からの馬場情報は必見です!
先週から中山競馬が開幕。春開催は皐月賞まで続くので、今回は中山の芝コースの基本事項や傾向などをご紹介します。
まずは芝の種類から。現在、JRAでは競馬場や季節によって3種類の芝を使い分けており((1)野芝のみ、(2)野芝に洋芝のイタリアンライグラスをオーバーシード、(3)洋芝のみ)、中山では野芝が育つ秋開催は野芝のみで、それ以外の春や冬開催は野芝に洋芝をオーバーシードした状態でレースを施行しています。
中山は夏に行われる芝の張替時間が長く取れるのが特徴。その期間は4月中旬の開催終了後から9月に競馬を迎えるまでの約4ヵ月半。これは東京、中山、京都、阪神のいわゆる4大競馬場の中で最も長く、ゆえに張替えた野芝がしっかり根づくため、時計が速くなりやすいです。
最近の中山での大きな変更といえば2014年夏、15年ぶりに芝馬場の路盤を改造したこと。事前の土壌調査で中山はJRA全10場の中で排水性が極めて低い事が判明したそうです。そのため、競走馬が走行するコース内側を中心に、上層路盤の下に、細かい石で構成された砕石層を新設。併せて直線の坂下など、水はけの悪かった箇所に暗渠排水管も新設されました。これにより中山の排水性は格段に向上。馬場改造後は速い脚を使える馬や、サンデー系の出番が増えてきました。
そして、馬場に興味があれば一度は聞いた事があるであろう“エアレーション作業”。これは芝の張替前にバーチドレンやシャタリングマシンと呼ばれる機械で路盤をほぐして、通気性や排水性を向上させ、芝がより生育する環境を整えるのが主な内容です。
近年、JRAでは“馬場をより軟らかくしていこう”という方針を掲げ、競馬場によってはこの作業を張替時だけではなく、競馬が開幕する約1ヵ月前にも行うようになりました。中山では2013年頃からこの作業を、基本的に連続開催以外の2月からの2回開催、9月の4回開催、12月の5回開催の前に行っていました。
今、「行っていました」と過去形で書いたのは最近少々、中山では事情が変わってきたからです。