競馬キャスター、ならびに単行本「馬場のすべて教えます2」の著者としてもお馴染みの小島友実さんによる連載『コジトモの馬場よもやま話』。
今回のテーマは「リニューアル後、1年数か月が経過した美浦トレーニングセンターの坂路」について。長年にわたり“馬場”を取材してきた第一人者からの馬場情報は必見です!
新しい年が始まりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。今年、最初の話題は2023年10月のリニューアルから1年数か月が経過した“美浦トレーニングセンターの坂路”です。
リニューアル後の最大の変更点は高低差。以前は18mでしたが33mになり、栗東坂路の高低差32mを1m超える坂路に生まれ変わりました。また、以前の坂路はスタート付近が平坦でしたが、新坂路はスタートから勾配があります。スタートから約180mが2.0%、その後、約810mが3.0%、ゴール(計測区間終了地点)を過ぎた後の80mが4.6%と、きつくなりました。
なお、全長1200m、計測区間800m、幅員12mは以前と変わっていません。また、頂上部分も改良。ゴール地点を50m手前に移設し、減速区間が延伸。より安全に減速できるような構造になりました。
昨年11月にJRA主催の「競走馬に関する調査研究発表会」に参加したところ、美浦の坂路がリニューアルした後の実際の使用状況や運動強度の変化などについての発表がありました。興味深い話を聞くことができたので、今回お伝えしたいと思います。
まず、使用頭数です。JARISデータベースによると坂路調教馬の頭数は改修前の2022年10月1日~2023年5月29日が15万4847頭であったのに対し、改修後の2023年10月1日~2024年5月29日は17万1291頭。改修後の坂路使用頭数は増えています。
調教師から、「土日に坂路に入れて運動する機会が増えた」と聞いたことがありますし、現にリーディング上位の厩舎では週末に追い切りほどではないものの、速めの時計で坂路調整を行うケースが増えています。
また改修後、事故見舞金発生率に有意な変化は認められなかったそうです。つまり、馬の故障への影響は現時点では以前と変わっていないということです。
では、肝心のトレーニング効果はどうなのでしょうか。