競馬キャスター、ならびに単行本「馬場のすべて教えます2」の著者としてもお馴染みの小島友実さんによる連載『コジトモの馬場よもやま話』。
今回のテーマは「東京芝コースの排水性が向上している最新事情」について。長年にわたり“馬場”を取材してきた第一人者からの馬場情報は必見です!
先週の東京芝コースも時計が速かったですね。エプソムカップはセイウンハーデスが1分43秒9のコースレコードで勝利! それも、レース当日は午前中まで小雨が降っており、“稍重”でしたからね。前半1000mが57秒3と流れたのも影響したと思いますが、それにしても驚きました。
芝が稍重でレコードだったレース、ほかにあるかな?と思ったので調べてみました。それが、意外や意外!? けっこうあるんですよ。その中からいくつか紹介しますね。
最近では2023年にキャットファイトが中山芝1600mのアスター賞を2歳コースレコード(1分33秒1)で勝利。また、2019年にスカーレットカラーが府中牝馬Sをレースレコード(1分44秒5)で勝利。
古くは 1995年にダンツシアトルが京都で行われた宝塚記念を当時の日本レコード(2分10秒2)で1着。また、1994年にナリタブライアンが菊花賞をレースレコードの3分4秒6で制しています。さらに古い記録では、メジロライアンが1990年の京都新聞杯をコースレコード(2分12秒3)で勝った時はなんと“重”でした。
ということで、良でなくてもレコードが出たレースがあると再確認し、勉強になりました。もちろん、道悪でもレコードが出た理由には、まずその馬が持っていたポテンシャルの高さや、厩舎をはじめとする馬を支えるホースマンの皆さんの努力が最も影響しているでしょうが、その背景には馬場管理技術の向上もあったと思います。
2週続けてレコードがマークされた東京芝コースに関しては、やはり排水性の良さが影響しています。東京競馬場では排水性を高めるために、2003年から2011年にかけて段階的に“暗渠(あんきょ)排水管”が設置されました。暗渠排水は水田にも用いられる手法。筒形の排水管を芝コースの路盤に入れることで、水が抜けやすくなります。東京芝コースにはこの暗渠排水管が10mピッチで入っています。
さらに今回、気になったので東京競馬場の馬場担当者を取材しました。すると、この暗渠排水管以外に東京芝コースの排水性が良い理由がもう1つある事が判明。担当者は以下のように話していました。
「東京芝コースでは2018年以降、夏の馬場張替を行う際、段階的に水はけが悪くなった路盤箇所の山砂を入れ替える作業を行っています。この作業は東京競馬場以外の他場でも行っている作業ではありますが、特に東京では効果が表れていると感じています」
なるほど。そういうことでしたか。担当者が話す通り、古くなった路盤の山砂入替はよく行われているので、私も特に注目していたわけではなかったのですが、これが蓄積していくと大きな効果を生むということなのでしょうね。これもまた、勉強になりました。
さて、その東京芝コース。今週からはBコースに替わります。