競馬キャスター、ならびに単行本「馬場のすべて教えます2」の著者としてもお馴染みの小島友実さんによる連載『コジトモの馬場よもやま話』。
今回のテーマは「宝塚記念が2週間繰り上げられた影響」について。長年にわたり“馬場”を取材してきた第一人者からの馬場情報は必見です!
先週から始まった3回阪神開催。芝のレースは11鞍あり、逃げ2勝、先行5勝、中団4勝(中団から勝った4頭中3頭は2番人気内)。近年の傾向らしく、1着は先行系がやや優勢でしたが、日曜は中団差しが台頭していました。そして開幕週ということで、時計は速めでしたね。
先週の当コラムで書いた通り、今年3月からの開催前に阪神芝コースでは直線と向正面の全幅員など、約52400㎡の大幅な芝張替を実施しているので、芝コースはまだ良い状態を保てています。
さあ、今週末は上半期の締めくくり、宝塚記念が行われますね。それも今年は暑熱や梅雨の影響を考慮して、実施時期を2週間繰り上げて実施されます。“この2週間の繰り上げが馬場や宝塚記念にどんな影響を与えるのか”が今回のテーマです。
宝塚記念は昨年まで、6月の阪神開催の最終週の施行でした。梅雨時期の最終週施行ということで、過去には馬場が傷んだ状態になるケースが多かったです。実際、2013年から2017年の宝塚記念では5年連続で8枠馬が勝利。この頃の勝ち馬を見ると、2013年と2014年に連覇したゴールドシップや2017年のサトノクラウンなど道悪巧者が名を連ねています。
阪神芝コースは元々、夏季の芝張替時間が中山や京都競馬場と比べると短いため、以前は張替面積が多くなく、開催後半になると傷みが進み、“力の要る馬場”になることが多々ありました。
そこで阪神競馬場では2016年以降、数年かけて場内にある芝の養成地を増やし、張替作業の効率化も図って、張替面積を増やしています。その養成地に導入されたのが、当コラムでも度々登場している、傷みにくい芝である“鳥取産野芝”です。また、以前は行っていなかった冬の芝張替を導入するなど、新しい取組も実施。これら様々な作業の変化や地道な努力によって、近年の阪神芝コースは以前と比べると本当に傷みにくくなりました。
その影響は宝塚記念にも表れており、2022年にはタイトルホルダーが2分9秒7のレースレコードで優勝したほか、2019年と2021年の勝ち時計が2分10秒台になるなど、良であれば速い時計が出ています。
ここで気になるのは今週末の天気。予報によると週末は雨が降る可能性が高そうです。今年3月以降阪神芝コースが稍重以上の道悪になったのは、朝から雨が降って稍重から重に悪化した3月16日(日曜)と、未明から断続的に降って良から稍重になった桜花賞当日の4月13日の2日間。両日とも極端な外伸びにはならず、3~4分くらいが伸びるような感じでした。
そして桜花賞の勝ち時計は1分33秒1。同じく稍重で行われた2017年のレーヌミノルの桜花賞勝ち時計が1分34秒5だったことを考えると、今年はそんなにかかっていませんでしたよね。
ですから、今の阪神は道悪になっても、タフで力の要る馬場にはあまりならないので、昔のイメージは持たない方がよいです。
そして雨が降ったとしても、止めば乾きは早いです。今年春開催の例を紹介します。2回阪神1週目の3月28日(金曜)朝までに28ミリもの雨が降り、28日正午の段階で芝は重でしたが、29日(土曜)はなんと朝から良に回復していました。ちなみに、この29日に行われた毎日杯はファンダムが歴代2位となる好タイムで勝利しています。
では、宝塚記念ではどんな点に注意すべきでしょうか。