競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。今回のテーマは「香港チャンピオンズデーの見どころ」です。
天皇賞・春が行われる28日、香港のシャティン競馬場では「チャンピオンズデー」が開催されます。
香港の「チャンピオンズデー」は、芝1200mの「チェアマンズスプリントプライズ」、芝1600mの「チャンピオンズマイル」、芝2000mの「クイーンエリザベスII世カップ」、3つのG1競走を同日に行うという香港競馬における春の祭典。
2018年に創設されて以来、今年は初めて日本調教馬が3つのG1レースすべてに出走し、いずれも海外馬券発売が行われます。(情報は4/24時点)
天皇賞・春の発走(15時40分)から10分後、日本時間の15時50分に発走になるのが芝1200mのG1「チェアマンズスプリントプライズ」です。2016年にG1に格付けされ、日本調教馬は過去4頭が出走し、2018年ファインニードルの4着が最高着順です。
今年は先月の高松宮記念を勝ったばかりのマッドクールが引き続き坂井瑠星騎手とのコンビで参戦するほか、まだ重賞勝ちはないものの前走の阪急杯(G3)で僅差の3着に入ったサンライズロナウドが出走します。
大手ブックメーカー「ウィリアムヒル」の1番人気は、地元香港のカリフォルニアスパングル(騙6/B・アブドゥラ騎手/A・クルーズ厩舎)で3.5倍。2022年の香港マイル(G1)でゴールデンシックスティに土をつけたこともあるなど、長くマイル路線を使われていましたが、前走ドバイのアルクオーツスプリント(G1)では2年ぶりとなる1200m戦で勝利。クイーンズシルバージュビリーC(シャティン芝1400m)につづきG1連勝中です。
2番人気はマッドクール(牡5/坂井瑠星騎手/池添学厩舎)とビクターザウィナー(騙6/K・リョン騎手/C・シャム厩舎)が4.5倍の評価で並んでいます。マッドクールは8着に敗れた2走前の香港スプリント(G1)の雪辱を果たしたいところ。一方、地元香港のビクターザウィナーはマッドクールが勝った高松宮記念の3着馬。この馬の武器は日本のファンもよく知っている通り、テンのスピードです。
なお、サンライズロナウド(牡5/D・レーン騎手/安田翔伍厩舎)は17倍というオッズ。管理する安田翔伍師が父・安田隆行厩舎での助手時代に調教師になろうと意識したのが、香港スプリント連覇のロードカナロアに帯同した香港遠征でした。偉大な父から引き継いだサンライズロナウド。転厩初戦の舞台は香港です。
少し時間が空いて、日本時間の17時に発走予定なのが芝のマイル戦「チャンピオンズマイル」です。日本からはオーストラリアからの転戦となるオオバンブルマイ、去年のNHKマイルC優勝馬シャンパンカラー、重賞2勝馬エルトンバローズの3頭が出走します。
日本調教馬がチャンピオンズマイルに出走するのは、モーリスが優勝し前年の香港マイルとのダブル制覇を果たした2016年以来8年ぶり。海外馬券発売が行われるようになったのは2016年10月の凱旋門賞からですから、チャンピオンズマイルの海外馬券発売は初めてとなります。
このレースの注目は何と言っても地元香港の英雄ゴールデンシックスティ(騙8/C・ホー騎手/K・ルイ厩舎)。去年12月の香港マイルで10個目のG1タイトルを獲得した世界最高獲得賞金馬が、このレース4連覇に挑みます。
ウィリアムヒルのオッズは1.9倍。昨年末に左前脚に炎症を起こし、香港マイル以来のレースになりますが、実戦形式のバリアートライアル(模擬レース)には出ており、態勢は整っているようです。これがラストランになる可能性もあり、あの直線での爆発力が今回も見られるのか目が離せません。
2番人気は7.0倍で香港のヴォイッジバブル(騙5/J・マクドナルド騎手/P・イウ厩舎)。1月の香港スチュワーズCで初のG1タイトルを手にしましたが、前走ドバイターフでは13着に敗れています。
これに続くのは前走チェアマンズトロフィー(G2)で2着だった香港のビューティーエターナル(騙5/Z・パートン騎手/J・サイズ厩舎)で8.0倍。
地元香港の4歳馬で、前出のクイーンズシルバージュビリーCでカリフォルニアスパングルの2着、前走のリステッド香港ダービー(芝2000m)も2着だったギャラクシーパッチ(騙4/B・シン騎手/P・ング厩舎)が10.0倍。
また、去年のチャンピオンズマイル2着馬で、前走チェアマンズトロフィー(G2)を勝っているビューティージョイ(騙7/B・アブドゥラ騎手/A・クルーズ厩舎)が11.0倍と、1~5番人気を地元香港勢が占めています。
日本勢はエルトンバローズ(牡4/西村淳也騎手/杉山晴紀厩舎)とオオバンブルマイ(牡4/D・レーン騎手/吉村圭司厩舎)が15.0倍の6番人気タイ。シャンパンカラー(牡4/坂井瑠星騎手/田中剛厩舎)は101倍の低評価となっています。
そして、芝2000mのG1クイーンエリザベスII世Cは日本時間の17時40分発走です。
日本調教馬は過去、2002年と2003年にエイシンプレストンが連覇、2012年ルーラーシップ、2017年ネオリアリズム、2019年ウインブライト、1~4着を日本勢が独占した2021年はラヴズオンリーユーが制しているレース。今年は3度目のシャティンとなる去年の2着馬プログノーシス、香港C出走を2度経験しているヒシイグアス、2月には中東カタールに遠征した重賞2勝馬ノースブリッジの3頭が参戦します。
ウィリアムヒルが2.4倍の1番人気に支持するのは香港中距離界の最強馬ロマンチックウォリアー(騙6/J・マクドナルド騎手/C・シャム厩舎)。こちらは、このレース3連覇がかかります。
去年10月には豪G1コックスプレートを勝利。12月の香港C、前走2/25の香港ゴールドCも横綱相撲で連勝中で、並んだらまず競り負けない抜群の安定感です。高松宮記念にビクターザウィナーで来日した管理するチャップシン・シャム調教師は6月の安田記念参戦プランを明言しており要注目です。
2.9倍の2番人気はプログノーシス(牡6/川田将雅騎手/中内田充正厩舎)。12月の香港Cは5着に敗れましたが、前走の金鯱賞(G2)では菊花賞馬ドゥレッツァに5馬身差をつけてレース連覇。去年は2馬身差つけられたロマンチックウォリアーに再び挑みます。
これに続くのは、アイルランドのA・オブライエン厩舎から香港に移籍し、前走の香港ダービー(L)を強烈な末脚で勝利したマッシヴソヴリン(騙4/Z・パートン騎手/C・イブ厩舎)と、去年はオーストラリアでG1を2勝、香港遠征の経験も豊富な英国調教馬ドバイオナー(騙6/T・マーカンド騎手/W・ハガス厩舎)が9.0倍で3番人気タイ。
同じ舞台の香港Cで2021年がラヴズオンリーユーの2着、2走前の去年は勝ったロマンチックウォリアーからアタマ・アタマ差の3着とコース適性抜群のヒシイグアス(牡8/D・レーン騎手/堀宣行厩舎)が13.0倍の5番人気。
前走ドバイターフは6着だった地元香港のストレートアロン(騙5/B・アブドゥラ騎手/C・ファウンズ厩舎)が21.0倍の6番人気。
一方、父は香港のG1を3勝したモーリス、騎乗するのはロードカナロアで香港スプリントを連覇した鞍上というノースブリッジ(牡6/岩田康誠騎手/奥村武厩舎)は51倍の評価となっています。
シャティン競馬場は水はけが良いことで知られており、2018年のチャンピオンズデー創設以降、レース当日に良馬場以外となったことは1度もありません。ただこの時期は高温多湿な香港。週間天気を見ると、連日、一時的な雷雨がある予報となっていますので、当日の馬場コンディションには留意したいところです。