『田端到・加藤栄の種牡馬事典』で知られる田端到氏が、馬券術の入門から応用まで競馬予想の考え方・コツを伝授する『王様・田端到の「名馬に学ぶ馬券術」』。
今回のテーマは前回に引き続き「内回りと外回りの違い」です。ぜひお楽しみください!
内回りと外回りの違いを名馬に学ぶ。今回は新潟競馬場と、京都競馬場です。
まず、ローカルで唯一、内回りと外回りが設定されている新潟競馬場を見ていきます。
新潟の内回りと外回りの違いは、直線の長さです。内回りは358.7m、外回りは658.7m。なんと300mも違う。もはや別の競馬場だと思ったほうがいい。
芝1200、芝1400、芝2200、芝2400などが内回りコース。芝1600、芝1800、芝2000などが外回りコースです。一部例外あり、未勝利クラスの芝2000は内回りも使われます。芝1000は直線コースです。
▼参考/JRAホームページ
新潟競馬場 コース紹介
直線の長さが300mも違えば、内回りは先行有利、外回りは差し有利と考えたくなりますが、意外とそうでもない。
例えば内回りの芝1400と、外回りの芝1600を比べると、後方10番手以下に付けた差し馬の勝率や複勝率はほとんど変わりません。逃げた馬の勝率や複勝率は芝1400のほうが高いですが、2番手から4番手に付けた先行馬の勝率や複勝率は逆に芝1600のほうが高い。
いちいち全部覚える必要はないとしても、単純に内回りは先行有利、外回りは差し有利でないことは知っておくべきでしょう。脚質どうこうより、外回りはいい脚を長く使える馬に向き、内回りは一瞬の速い脚を使える馬に向く。この違いです。
続いて京都競馬場。
芝1200、芝1400と芝1600の新馬と未勝利戦、芝2000などが内回りコース。芝1400と芝1600の1勝クラス以上、芝1800、芝2200、芝2400、芝3000、芝3200などが外回りコースで行われます。一部例外あり。
▼参考/JRAホームページ
京都競馬場 コース紹介
京都も阪神同様、内回りを横に引っ張って横長にしたような形状が外回りなので、直線の長さが違います。内回りは直線328.4m、外回りは直線403.7m(Aコース使用時)。約75m、外回りが長い。
しかし、もっと重要な違いがあります。それは勾配の差です。JRAホームページのコース立体図を見てもらうとわかりますが、3コーナー手前からの登り坂を延長したのが外回りコースのため、登り坂が長く、急勾配になります。当然、坂の頂点からの下り坂も長く、急勾配になります。
内回りの高低差は3.1mなのに対して、外回りの高低差は4.3m。この違いが大きい。特に外回りの下り坂は、残り800m地点から一気に下るため、レースの流れに多大な影響を与える。ここからペースアップしてレースが動きやすいのです。
競馬実況の吟遊詩人・杉本清アナウンサーの「この坂は、ゆっくりと、ゆっくりと、下らなければいけません」という有名なフレーズを知っているでしょうか。これは、京都の下り坂をペースアップして走ってしまうと、ゴールまでまだ800mあるため、最後まで持たない恐れがある。だからゆっくり下らなくてはいけないと、当時の名ジョッキーに聞いたことから生まれたフレーズとされています。
京都の外回りは下り坂からペースアップするため、上がり4ハロンのロングスパート勝負になる。その結果、長い末脚を使える馬や、欧州血統を持つ馬がよく走る。これが内回りとの重要な違いです。
この独特なコース形状は、特に長距離戦において「淀のスペシャリスト」を生みます。京都の長距離は2度の登り坂と下り坂があるため、ここだけはお任せという特化型のステイヤーに陽を当てるのです。
ヒシミラクルに登場してもらいましょう。デビューは2001年の2歳夏。初勝利は3歳5月の未勝利クラスという遅咲きの馬でした。勝ち上がる前に馬券になったのは京都の外回り芝1800だけです。