競馬キャスター、ならびに単行本「馬場のすべて教えます2」の著者としてもお馴染みの小島友実さんによる連載『コジトモの馬場よもやま話』。
今回のテーマは「中山芝の時計が速い理由」について。長年にわたり“馬場”を取材してきた第一人者からの馬場情報は必見です!
秋の中山競馬は2週目が終了しました。3日間開催だった先週は16日(月曜)の0時前後に5ミリの雨が降って、16日の芝のレースでは少し時計の出方が鈍りましたが、14日(土曜)、15日(日曜)は速い時計が出るコンディション。そして、開幕週同様に内目を通る先行馬が活躍していました。
振り返ると、開幕初日の9月7日(土曜)に行われた紫苑Sはコースレコードで決着。8日(日曜)の1600mの新馬戦ではスローペースだったのにも関わらず、2歳コースレコードを更新。たいていレコードが出る時はハイペースかミドルペースが多いので、このレコードには驚きました。
また、拙著「馬場のすべて教えます2」に書いた通り、中山芝は2014年秋に路盤改造工事を行った以降は、加速ラップ(ラスト1ハロンのタイムがその前の1ハロンより速くなる)のレースが増加しています。今年の秋開催もこの傾向が顕著。ここまでの2週を終えて、昨年の同時期同様に加速ラップのレースが多発しています。
一般的に加速ラップのレースは高評価になるケースが多いですが、そもそも最近の秋の中山芝は加速ラップになるレースの方が多いので、レースごとに内容を慎重に精査する必要があると思います。
全体的に今年秋の中山は昨年の同時期より速い時計が出ています。それはなぜなのか。その話をする前に基本的な事項を改めて説明しておきます。
そもそも、中山は夏期に行われる芝の張替期間が長く取れます。例年、4月末頃から張替作業に入り、走路部分に関しての張替はおおむね6月までに終了。張替と養生に充てられる期間は9月に競馬を迎えるまで約4か月半あります。これは東京、中山、京都、阪神のいわゆる4大競馬場の中で最も長く、野芝がしっかりと根付きます。
つまり、青々と生長した野芝100%で迎える秋の中山開催は絶好の状態。秋開催で速い時計が出るのは年間で一番良い状態であることがベースにあります。
さらに、レース当日までの中間の雨量や、開催前にどんなエアレーション作業を行ったかも走破時計に影響をもたらします。
まず雨量。今年は台風10号が去った後は雨が降る機会が減りました。そのため雨量が少なく、今年秋の開幕週における中山芝の平均クッション値は10.3。2020年~2023年の中山芝の平均クッション値は9.7ですから、やはり開幕週のクッション値は高めでした。
クッション性=硬さの度合い。この数値が高ければ、それだけ馬場が締まっているということ。そうなれば時計が速くなります。
あとは9月3日号の当コラム(今年秋の中山芝も時計が速そう)に書いた通り、シャタリング作業の時期もポイント。