寒い冬と暑い夏の間にある春は1年のうちで最も強風の日が多い季節です。南からの暖気と北に残る寒気がぶつかり合い温度差が生まれることで低気圧が急速に発達することが多く、時に突風が吹き荒れることもあります。
屋外で行われる競馬も少なからず風の影響を受けると言われていて、最近は予想のファクターに取り入れている方も多いようです。強い風が吹きやすい今の季節は、その重要度がより増しているかもしれません。
競馬と風の話題で思い出されるのが2016年の皐月賞。サトノダイヤモンド、リオンディーズ、マカヒキら人気馬を抑えて、単勝30.9倍の8番人気だったディーマジェスティが勝利したレースです。当日の中山競馬場は風速10m/s近い南寄りの強風が吹き荒れていて、レース結果にも大きく影響したと言われています。
冬ではありますが、今年1月21日の土曜午前の中山競馬場も最大瞬間風速10m/sを超える強風が吹いていました。中山競馬場の北寄りの風は正面直線が向かい風。1ターンのレースではラスト1ハロンのラップタイムが前半のラップタイムより4秒前後も遅くなっていましたが、差しや追い込みは全く届いていませんでした。
グリーンチャンネルの競馬中継は東京都内にあるスタジオと各競馬場をつないで進行しているので、私たちキャスターは直接、競馬場の様子を知ることはできません。ですから、パドックに詰めている出演者や実況アナウンサーからの情報、映像を通じての情報などを元に、競馬場の気象の情報をなるべく詳しくお伝えしたいと努めています。風の情報ならば、旗のはためき方や木々の葉の揺れ、ダートコースの砂埃が判断材料になります。
また、今の時代は各端末で風の情報を含め細かな気象情報を入手できるので、リアルな生の情報ではないものの、大まかな様子はわかります。レース内容にも影響を与えそうなほど風が強い日は、競馬場のある地域の風向きと風の強さについての情報を入手して、状況をある程度は把握しておこうと思っています。
その上で、これが分かっていないと意味がないのが競馬場の「コースの向き」です。その風向きが競馬場ではコースのどちらに向かっているのか。この機会に、現在開催中の3場の「コースの向き」をまとめておきます。
右回りの中山競馬場は真上から見ると、1~2コーナーが北、3~4コーナーが南です。南寄りの風は、向正面が向かい風、正面直線が追い風。逆に北寄りの風は、向正面が追い風、正面直線が向かい風になります。
同じく右回りの阪神競馬場は真上から見ると、1~2コーナーが西、3~4コーナーが東。西寄りの風は、向正面が追い風、正面直線が向かい風。逆に東寄りの風は、向正面が向かい風、正面直線が追い風になります。
左回りの中京競馬場は真上から見ると、1コーナーが西、2コーナーが南、3コーナーが東、4コーナーが北…のイメージ。北東の風は、向正面向かい風、正面直線追い風。南西の風は、向正面追い風、正面直線向かい風です。
もちろん、各競馬場には大きなスタンドがあり、風向きによっては、風がブロックされたり、はね返って舞ったりするケースも見られます。桶狭間の古戦場に近い中京競馬場などは、地形の影響を受けて、かなり複雑に吹く日も多い気がします。したがって、風が実際に競馬場ではどう吹いているのかは断言はできません。
追い風、向かい風、あるいは横風といったファクターが、馬の能力やレースにどう影響するのか。まだまだこれから研究が進んでいく発展途上の段階かと思います。ですが、馬場コンディションなどのトラックバイアスのように予想の1ファクターにすることは、競馬の予想をより深いものにしてくれる気がします。
将来、「種牡馬○○の産駒は強風のレースに強い」なんて格言が生まれる日も来るかもしれませんね。
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。