プロ馬券師・双馬毅氏が実践例を交えながら馬券理論を解説する『双馬毅の“ローテ×血統”錬金術』。今回は大きな反響を呼んでいる「新種牡馬雑感」の続編をお届けします。
なお、『競馬放送局』では双馬氏の推奨レース(予想)、特選リストを公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください!
双馬: 前々回、前回に引き続き新種牡馬の分析です。ここまでスワーヴリチャード、レイデオロ、ニューイヤーズデイ、ブリックスアンドモルタルと、社台スタリオンステーションの繋養種牡馬を取り上げましたが、今回はそれ以外の種牡馬も見ていきましょう。
まずは用意した表を見てください。これはノーザンファーム生産馬を除いた新種牡馬の成績なんですが、繁殖や育成のおかげではなく、純粋な種牡馬能力をざっと調べるのにちょうど良いんです。ちなみに、赤く塗ったのが複勝率が優秀な種牡馬です。
芝はもちろんスワーヴリチャードが1位です。レイデオロはノーザンファーム生産馬を除くと大きく順位を下げています。ブリックスアンドモルタルは勝利数は多いんですけど、複勝率が16.3%しかありません。そして、意外に良かったのがロジャーバローズです。
中距離適性を調べるという意味で、芝1600m以上の数字も出してみました。これを見てもやはりスワーヴリチャード、ロジャーバローズは良いですね。逆に、ブリックスアンドモルタル、レイデオロ、アルアインは中距離に限定しても好走率は高くなりませんでした。ホークビル、ミッキーグローリー、アニマルキングダム、アドミラブルにいたっては残念な結果になっています。
ダートは先週話した通りニューイヤーズデイが良いんですが、面白いのがブリックスアンドモルタルの複勝率が一気に上がってくるんです。
──芝が16.3%、ダートが43.8%というのは差が極端ですね。
双馬: レイデオロも複勝率11.7%から36.0%まで上がります。他には、アポロケンタッキーも複勝率35.3%あるので、これから穴血統になりそうですね。
──ノーザンファーム生産馬以外で見ると、その種牡馬の本当の適性がよく分かるんですね。
双馬: はい。レイデオロだってノーザンファーム生産馬の成績を見たら、「芝でものすごく走るじゃん!」ってなりますからね。でも、前から言っているように血統的にダートのほうが向いていると思います。
──ダート適性の高い種牡馬でも芝で走らせてしまうノーザンファームの凄さが改めて分かるデータでもありますね。
双馬: 今回はこのデータを踏まえて、カリフォルニアクロームとロジャーバローズについて解説したいと思います。
【カリフォルニアクローム】
双馬: カリフォルニアクロームは回収率が高いので一見良く見えるんですが、複勝8070円という配当が出たのでここまで高くなっています。複勝率で見たらニューイヤーズデイに10%以上離されていますから、現時点での成績が優秀とは言えません。
理由としては、7月の段階でも言いましたが、産駒の馬体があまりよく見えないというのがひとつ。もうひとつは極端に揉まれ弱いということです。これはダートが得意な種牡馬にとっては致命的で、内枠で差してきた馬はほぼいません。
距離別成績を見ても1200mが悪いんですが、これは短距離がこなせていないということのほかに、揉まれるから苦手にしているんだと思います。そして、距離が延びて先行できるようになったら揉まれないので穴をあける。こういう一発があるから回収率だけ高くなるんです。
新馬戦で揉まれてレースを放棄した馬が、未勝利戦で2、3着に来たりするんですよ。複勝8070円のワイドブリザードも新馬戦で内枠で揉まれて13着、2戦目で外枠&減量騎手で先行して3着、3戦目で外枠から逃げたら1着でした。だから、揉まれ弱いということを知っておくと、揉まれないタイミングで買うだけでも儲かります。内枠で揉まれた後に外枠を引くとか、距離を延ばして先行できそうなタイミングとかですね。
逆に、人気で消すパターンも簡単で、新馬戦で好走した馬はほぼ揉まれていないと思うので、2戦目で揉まれそうな人気馬がいたら消すことができます。馬券的には非常にわかりやすくて破壊力もあります。なぜなら揉まれたら一切走らないから。
特に、日本での初年度産駒(現3歳)、2年目の産駒(現2歳)は種付け料も高く、期待の種牡馬だったこともあり、繁殖牝馬の質が良いので、穴をあける確率が高いと思います。
【ロジャーバローズ】