『田端到・加藤栄の種牡馬事典』で知られる田端到氏が、馬券術の入門から応用まで競馬予想の考え方・コツを伝授する『王様・田端到の「名馬に学ぶ馬券術」』。
今回のテーマは前回に引き続き「出し入れ」の考え方です。ぜひお楽しみください!
出し入れの応用編。皐月賞とダービーの出し入れを取り上げます。他の連載陣が馬券的中を目指すコラムを書いている中、G1シーズンにひとりだけ昔の名馬を語っていることに耐えられず、先週と今週はちゃんと週末の馬券に役立つ話を書いています。
皐月賞とダービーの出し入れで、とてもシンプルながら、効果の大きい血統の基本技があります。それは、皐月賞では非サンデー系を重く見て、ダービーでは非サンデー系の評価を下げるという考え方です。
サンデー系とは、種牡馬サンデーサイレンスから発展した父系を指します。ディープインパクト、ハーツクライ、ステイゴールド、キタサンブラック、キズナ、オルフェーヴル、ゴールドシップ、みんなサンデー系です。
非サンデー系とは、それ以外の父系を指します。キングマンボ系(ドゥラメンテ、ロードカナロアなど)、ロベルト系(エピファネイア、モーリスなど)、ストームキャット系(ヘニーヒューズ、ドレフォンなど)、いろんな父系がありますが、サンデー系があまりにも圧倒的で一時期はG1レースの大部分を勝利したため、「サンデー系か、それ以外か」という分け方、考え方が生まれました。
まず、皐月賞とダービーの成績の違いから。2013年から2022年の10年間。
▼皐月賞
サンデー系 【5-5-6-84】
非サンデー系【5-5-4-59】
▼ダービー
サンデー系 【8-8-6-91】
非サンデー系【2-2-4-57】
皐月賞では、どちらも5勝をあげてほぼ互角。3着以内に来た率は非サンデー系が上位なのに対して、ダービーではサンデー系が8勝、非サンデー系が2勝と大差がついています。
サンデー系は、末脚をためて長い直線で鋭い切れ味を発揮するのが得意なため、東京コースの成績がいい。非サンデー系は、サンデー系の長所が薄まる小回りコースで相対的に浮上するため、中山コースの成績がいい。
ものすごく大雑把に説明すると、こうなります。だから、非サンデー系の馬を買うなら、東京のダービーより、中山の皐月賞のほうが効率は良い。ダービーでは過大評価しないほうがいい。これが非サンデー系の出し入れの基本です。
もちろん例外はあり、2015年のダービー馬ドゥラメンテと、2017年のダービー馬レイデオロは、非サンデー系。どちらもキングカメハメハ産駒です。
もう少し、絞ってみましょう。皐月賞で3着以内だった馬のダービー成績を比べます。
・「サンデー系で皐月賞3着以内」の馬は、ダービーで【3-6-2-4】。複勝率73.3%。内訳が下の表です(赤字は3着以内。青字は上位人気で4着以下)。
▲「サンデー系で皐月賞3着以内」のダービー成績
・「非サンデー系で皐月賞3着以内」の馬は、ダービーで【1-2-1-10】。複勝率28.6%。内訳が下の表です。
▲「非サンデー系で皐月賞3着以内」のダービー成績
偉大なるサンデーサイレンス様の直系の子孫かどうかだけで、ダービーの成績はこんなにも違ってしまう。
昨年も知り合いに『ダービーでジオグリフ(父ドレフォン、非サンデー系)を買いたい。どうか?』と質問され、このデータを教えてあげたのですが、彼は『聞かなかったことにする』と言ってジオグリフの馬券を買い、玉砕しました。
今年「サンデー系で皐月賞3着以内」に該当するのは、ソールオリエンス(父キタサンブラック)。「非サンデー系で皐月賞3着以内」に該当するのは、タスティエーラ(父サトノクラウン)と、ファントムシーフ(父ハービンジャー)です。
さらに皐月賞の位置取りを使って、サンデー系を絞ります。
・皐月賞で中団や後方(4角6番手以下)から3着以内にきたサンデー系は、ダービーで【3-0-1-1】。1着が多い。
・皐月賞で先行(4角5番手以内)して3着以内にきたサンデー系はダービーで【0-6-1-3】。2着が多い。
この傾向は今年のダービーに当てはまるでしょうか。
そして、この皐月賞とダービーの出し入れは、もっと広く、中山の芝コースと東京の芝コース全般に適用できる。一年中、使える血統の馬券術なのです。