新しく連載を始めることになりました。名馬を題材にしながら、初級者にもわかるような馬券術の入門編から、中級者向けの応用編まで、競馬予想の考え方についてまとめていきます。
第1回に取り上げるのは、ゴールドシップと競馬場適性です。
ゴールドシップは2012年の皐月賞、菊花賞、有馬記念、2013年、2014年の宝塚記念、2015年の天皇賞・春などを制した芦毛の名馬。抜群のスタミナを持ち、距離が長くなるほど強さを発揮するステイヤーでした。
戦歴の派手さもさることながら、父ステイゴールド譲りの激しくヤンチャな気性で知られ、ライオンのような声で吠えて他馬を威嚇したとか、騎手や調教助手を調教中に何度も振り落としたとか、単勝1倍台の宝塚記念で大出遅れをやらかして数十億円を一瞬でパーにしたとか、ワイルドなエピソードには事欠かない個性派でした。
ただし、誤解されている面もあります。
現役時代を知らないファンの中には「気まぐれ」で「いつ走るか、いつやらかすか、わからないタイプ」だったと思っている人もいるようですが、実際には得意な競馬場と苦手な競馬場がはっきりした馬でした。
競走馬には得意な競馬場と苦手な競馬場があり、どんなに強い馬でも、合わないコースではコロッと負けてしまう。これは馬券を買う上で、もっとも基礎になる大事な考え方です。
競馬場には、右回りも左回りもある。直線の長いコースもあれば、直線の短いコースもある。ゴール前に登り坂があるコースもあれば、平坦なコースもある。
競馬が人間の陸上競技より予測が難しいのは、馬が人よりアテにならないからではありません。人のほうがよっぽどアテにならない。いろんな競馬場を、様々な天候条件のもとで、個性豊かな馬たちが走るからです。
ゴールドシップの戦歴を振り返ります。主な競馬場4場の成績は以下の通り。
・阪神【6-1-0-1】複勝率87.5%
・中山【2-0-2-2】複勝率66.7%
・京都【2-0-0-3】複勝率40.0%
・東京【1-0-0-3】複勝率25.0%
もっとも得意だったのは阪神でした。宝塚記念2連覇、阪神大賞典3連覇。着外の1回は大出遅れの2015年宝塚記念で、これを除けば7戦6勝。盤石の強さでした。
もっとも苦手だったのは東京です。G3の共同通信杯を勝った以外は、3戦して馬券内なし。ダービー5着、ジャパンC15着、ジャパンC10着。上位人気を背負って3度、G1で馬群に沈みました。
ゴールドシップは気まぐれで好走と凡走が分かれた訳ではありません。気性どうこうの前に、合う競馬場と、合わない競馬場がはっきりしていただけです。
では、得意な競馬場と、苦手な競馬場はどんな理由で分かれるのか。
ここで自動車を思い浮かべてください。フェラーリの高級車と、国産の小型車が、競走したらどっちが速いでしょうか。
2023/01/12 (木)
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田端到
1962年、新潟生まれ。週刊誌記者を経てフリーのライターに。辛辣ながらも軽妙な文章には定評があり、馬券初心者からベテランまで多くのファンを持つ。近著に「田端到・加藤栄の種牡馬事典」シリーズ、「金満血統王国」シリーズなど。ウェブサイト・noteでは競馬マガジン『王様の極楽競馬天国』を連載中。