1月30日の東京10レース、3勝クラスの節分ステークス(芝1600m)は、芦毛の4歳牝馬リフレイムが2連勝を飾り、オープンクラスに返り咲きました。
スタート直後から先頭に立ってレースを引っ張り、直線に入ると馬場の真ん中に進路を取って残り300mでさらに外に斜行しながら先頭でゴール。2着とは2馬身半差の快勝でした。
今の東京の芝コースは、Aコースの9m外に内柵を設置したDコースを使用しているため、リフレイムがゴール直前で通った進路は、外ラチまで数mという距離。破天荒な勝ちっぷりに、私はすぐ、米国3冠馬アメリカンファラオを父に持つ彼女が海外メディアも取り上げるほどのインパクトを残した2020年夏のデビュー戦を思い出しました。
私が中継を担当する土曜日に行われた新潟・芝1600m外回りの新馬戦。18頭立ての15番ゲートからゆっくりとスタートしたリフレイムは、馬なりでポジションを上げ先頭に立つと、3馬身のリードを保ったまま直線に。するとグングンと外側に斜行し、内回りとの合流点頃には外ラチまで到達しますが、脚色は衰えず、内外大きく離れた2着馬に半馬身差つけての逃げ切り勝ちでした。レース後、同じ芦毛のエイシンヒカリが2014年秋のアイルランドトロフィー(当時OP特別)で横山典弘騎手を背に見せた破格のレースを思い出し、コメントしたことを覚えています。
その後、平地調教再審査もあり、差すスタイルに脚質転換したリフレイムは、1勝クラスはあっさりとクリアするものの、そこから伸び悩むことになったのは皆さんご存知の通り。矛先をダートに変えたり試行錯誤するも、なかなか結果が出ませんでした。
風向きが変わったのは去年の秋。4ヶ月の休養を挟み、鞍上を野中悠太郎騎手に替えて臨んだ2勝クラスの鷹巣山特別(東京芝1600m)ではデビュー戦以来の逃げの手に。直線は馬場の3~4分どころを抜け出し、最後は勝ち馬に交わされるものの2着。連対は6戦ぶりでした。すると翌月、同じ舞台の平場のレースを、やはり直線では外に斜行したものの、好位抜け出しの競馬で1年ぶりの勝利。そして日曜日、年明け初戦を連勝で飾ったのです。
「リフレイム」とは「再構成する、見方を変える、見直す」といった意味があるのだそうです。陣営の「リフレイム」が「馬の邪魔をせずに、スムーズに走ることを心掛けました」(野中騎手)という馬の気持ちを優先した騎乗に到達し、ここへ来ての復活につながっていることは間違いないようです。もちろん他の馬に危険を与えるようなことは決してあってはなりませんし、今後もっと大きな結果を出すためには、まだまだ課題が山積なのでしょう。でも、個性派の競走馬が活躍するのは、競馬ファンとしては楽しいですし、ふと「リフレイム」すると、あのゲームのことを思っちゃいます…。 個性派マイラー「リフレイム」の名が「ウマ娘」に登場する日も遠くないかもしれません。
リフレイム/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ
- 08/11 (木) ジャックルマロワ賞を勝利した名馬たち/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ
- 08/04 (木) ハクホウクンとホワイトエンジェル賞/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ
- 07/28 (木) 札幌競馬場のハナシ/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ
- 07/21 (木) 発汗のハナシ/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ
- 07/14 (木) “お値段以上”な馬たち/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ

大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。