かれこれ11年以上、土曜朝の競馬をお伝えしていますが、先日5日の土曜日は忘れられない朝になりました。
もちろん“衝撃の朝”の主役は角田大河騎手。父は角田晃一調教師、兄は角田大和騎手という期待のルーキーは、デビュー戦となった阪神1Rで8番人気メイショウソウゲツを見事勝利に導くと、次の阪神2Rでも2番人気のメイショウトールで勝利し、デビュー2連勝を達成。その瞬間、グリーンチャンネルのスタジオも、どよめきと拍手が起き、その後すぐに出演者とスタッフが一斉に記録を調べ始めました。こういう瞬間というのは生中継ならではの醍醐味で、言わば「嬉しいバタバタ」でした。
今回の記録達成のおかげで、過去の偉業を振り返ることも出来ました。まず「初騎乗初勝利」は移籍後初勝利を含め史上49人目。去年は小沢大仁騎手と永野猛蔵騎手が2人同日に達成し、「40年ぶり」と話題になりました。
中でも小沢大仁騎手はデビュー日に2勝をあげましたが、これは松山弘平騎手以来の史上4人目。今年の角田大河騎手は史上5人目の「デビュー日2勝」でした。大河騎手の土曜日の騎乗は3鞍でしたが、もう1鞍は3着。デビュー日に3勝した騎手はいまだかつておらず、史上初の快挙達成とはなりませんでした。
一方、初騎乗からの騎乗機会2連勝は、1979年の栗田伸一騎手、1996年の福永祐一騎手以来、史上3人目という快挙でした。
現在は調教師の音無秀孝騎手や安達昭夫騎手らと同期だった栗田伸一元騎手は、祖父がシンザンを管理したことでも知られる武田文吾調教師。父がそのシンザンに騎乗していた栗田勝元騎手ということもあってデビュー時から注目を集めました。そして1979年3月3日、デビュー戦となった阪神1Rのアラブ系オープンを2年前の最優秀アラブ馬ミサキシンボルで勝利すると、2鞍目の阪神12Rでも祖父・武田文吾厩舎の管理馬で勝利。デビュー日に2勝した史上初めての騎手となりました。
武田文吾調教師の愛弟子には、栗田伸一騎手の父でもある栗田勝騎手(武田文吾調教師の娘婿)と福永洋一騎手という2人の名騎手がいましたが、栗田伸一騎手以来の「デビュー日2連勝」を達成したのは福永洋一騎手の長男・福永祐一騎手でした。
栗田伸一騎手のデビューから17年後の1996年3月2日、天才騎手の長男・福永祐一騎手のデビューを伝えようと、中京競馬場には一般紙やテレビを含む多くの報道陣が詰めかけました。福永騎手は初騎乗の第2Rでいきなり初勝利を挙げると、続く第3Rでも勝利し連勝。翌週の日曜日には騎乗機会3連勝を記録するなど3月だけで12勝をあげました。このデビュー月の勝利数は史上最多です。
あれから26年。角田大河騎手のレース後のコメントを読むと、冷静にレースを分析出来ていて驚かされました。また、3年連続で新人騎手の初騎乗初勝利を実現した「メイショウ」さんや師匠の石橋守調教師、騎乗馬の厩舎関係者への感謝の気持ちがしっかりと述べられていて、感心することしきりでした。
次週以降もますます活躍し、また同期の皆さんもこの波に乗って、いつか「花の38期生」と呼ばれるようになればいいなと思っています。
デビュー2連勝! /大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ
- 09/21 (木) 1973年の競馬/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ
- 09/14 (木) 今さら聞けないセントライトのハナシ/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ
- 09/07 (木) ディープインパクトが父を超える日/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ
- 08/31 (木) 関東大震災と競馬/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ
- 08/24 (木) 夏休みの宿題(2) ~競馬計算ドリル~/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ

大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。