今週は牝馬三冠の第一関門・桜花賞が行われます。
桜花賞の歴史を紐解きますと、1939年に中山競馬場・芝1800mを舞台に「中山四歳牝馬特別」として創設され、戦後、舞台が京都競馬場の芝1600mに変わった際、新たに「桜花賞」と名付けられたのだそうです。1950年に阪神競馬場に移されて以降は“仁川の桜”をバックにした牝馬クラシック競走として定着しています。
それにしても、どなたかは存じ上げませんが、戦後、このレースを「桜花賞」と名付けた方を私は尊敬します。同様に戦後、レース名が季節の花の名に変更されたものに「菊花賞」がありますが、何と言っても「桜」は日本人の心。桜花賞創設の際に範をとった英国の「1000ギニー」が賞金額をそのままレース名にしたという生々しいもの(笑)であるのに対し、桜の花は3歳牝馬のイメージにもピッタリでナイスネーミングです。
1947年に元祖「桜花賞」のレース名が誕生すると、全国で「桜花賞」が行われるようになりました。1955年には浦和競馬の「桜花賞」が、1961年には名古屋競馬場に「東海桜花賞」が創設され、現在も行われています。
また、佐賀競馬場では「佐賀桜花賞」が行われているほか、かつては、中津競馬場の「中津桜花賞」、福山競馬場の「福山桜花賞」、高知競馬場の「南国桜花賞」、宇都宮競馬場の「北関東桜花賞」なども行われていました。現在、3歳牝馬限定の「桜花賞」は中央競馬と浦和競馬だけですが、全国に「桜花賞」があるのは、「桜花賞」というレース名が愛されている証拠です。
それだけに、「桜花賞」を外国の方向けに英訳する際は、「Japanese 1000 Guineas」ではなく、「Cherry Blossoms Stakes(Oka Sho)」って紹介したいなぁ、と思ってしまいます。説明するには「Japanese 1000 Guineas」が手っ取り早いでしょうが、きっと海外の方も、素敵なレース名だと気に入ってくれるのではないでしょうか。
そして、桜花賞馬に対する「桜の女王」という言い回し。これもまた日本競馬独特で個人的にお気に入りです。この流れで、日本のオークス馬は「樫の女王」と呼ばれます。そんな素敵な言葉がたくさん出てくる3歳牝馬の戦い。それぞれの桜の花をしっかり見極めて、馬券の方も満開といきたいですね。儚く散ることのなきように…。
桜花賞/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。