3月に入って始まった円安が止まりません。20日には一時、1ドル=129円台まで値下がりして、2002年以来、約20年ぶりの円安水準を更新しました。1年前からは19%下落、3月からの50日で12%以上も下落しています。
円安が引き起こす問題というと、輸入物価の上昇が挙げられます。日本経済を支える製造業は世界中から原材料を仕入れることで成り立っているので、円安はコストの高騰につながります。また、新型コロナウイルスのパンデミックによる世界経済の混乱や、ロシア軍のウクライナ侵攻に伴う原材料費、輸送コストの高騰により諸物価の値上げは避けられず、私たちの暮らしへの影響は深刻です。
競馬の世界における影響はどうでしょうか。まず強く感じているのが、海外レースの賞金です。
日本馬が1日5勝と大活躍した先月のドバイワールドカップデーの賞金はドル建てで支払われますが、シャフリヤールが勝ったドバイシーマクラシックの1着賞金は348万米ドル。これを、例えば現在のレート「1ドル=128円」で計算すると、4億4544万円となり、4億円を超えてしまいます。コロナの影響で去年は賞金が減額、一昨年はレースがありませんでしたから、今年と近い賞金額(実際は360万米ドル)だった2019年の年平均レート「1ドル=109円」で換算すると約3億8000万円となり、実に6500万円以上賞金が増えたことになります。
UAEダービーを勝ったクラウンプライドが出走するケンタッキーダービーの海外馬券発売が、マスターフェンサーが出走した2019年以来3年ぶりに行われることになりましたが、ケンタッキーダービーの1着賞金は186万米ドル。3年前の「1ドル=109円」なら2億274万円、現在の「1ドル=128円」なら2億3808万円。3500万円以上の上昇です。
海外のビッグレース出走は決して賞金だけが目当てではなく、特にケンタッキーダービーや凱旋門賞といった歴史と格式のあるレースならば、その栄誉こそが目的なのだと思いますが、それでも、日本円に換算した時に数千万円も高い額になるというのは見逃せません。日本馬の海外遠征が、今年は特に多くなりそうな大きな理由の一つとなっているのは間違いなさそうです。
その一方で、円安は、今年から1着賞金が3億円から4億円に引き上げられるジャパンカップに出走する外国馬にとっては逆の現象(賞金額の減少)をもたらします。日本人オーナーが外国馬を購入する際、そのハードルは円安によってかなり上がっているでしょう。また、物価の上昇は私たちの暮らし同様、競走馬の維持・管理の費用にも影響するはずです。
馬券購入資金に充てられるお小遣い確保のためにも、行き過ぎた円安や物価上昇が起こらないように祈りながら、経済動向に注視していきたいものです。
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。