「お知らせします。福島第6レースの○番△△は、馬場入場後、放馬したため、馬がつかまり次第、馬体検査を行います」「お知らせします。福島第6レースの○番△△は、馬体検査の結果、放馬による疲労が著しいため、競走から除外します」
競馬ファンなら一度は聞いたことがあるでしょう、競馬開催中に起こる様々な出来事について各競馬場の開催執務委員からの場内アナウンス。上記以外にも、ゲート入りや競走中の発生事項、入線後の写真判定、審議の内容についての説明など、様々な場面で行われます。毎週のように聞いている皆さんは、きっと真似することもできるのではないでしょうか。このアナウンス口調って独特ですよね。
極めてゆっくり淡々とされるアナウンスは、例えが適切でないかもしれませんが、自治体の防災無線などに近い口調で、少なくとも私たちがテレビなどの放送でするそれとは大きく異なります。大変重要な事項である上、競馬場や場外馬券発売所に向けてのアナウンスという意味で、理にかなっています。そして重要なご案内ですから、競馬中継内でもそのままお聞きいただくことになっています。
3場開催中の中央競馬は、今ですと福島→阪神→東京(東京→阪神)の順にレースが「10分間隔」で行われています。全場のパドックとレースの映像をお届けしているグリーンチャンネルの中継では、他場と同時刻発走にならない限りレースの映像を生中継しているので、この「10分間隔」の中でパドック映像や払い戻しなどを消化しなければなりません。
ところが、この「10分」というのは、その時々で十分な場合もあれば、短すぎて足りない場合もあります。出走頭数が多ければパドックは当然長くなりますし、レース自体の時間も距離によって違います。加えて上記のような放馬などのアクシデントがあると・・・。
先週末23日(土)の中継では、福島6レースの出走馬が東京5レースのレース中に放馬し、それについての競馬場からのアナウンスをそのまま放送しました。その後、16頭立ての東京6レースのパドックをご覧いただいている最中、馬体検査の結果、除外になりましたが、除外のアナウンスを放送し、返還のお知らせをご案内しているときには、すでに福島6レースの枠入りが進んでいました。
ファンファーレ、枠入りを含めてレースの映像をお届けするのが競馬中継の基本。中継後の反省会では、放馬、馬体検査等の競馬場からのアナウンスは、あまりにゆっくりで時間がかかるので、状況によっては内容をキャスターが代読するのもやむを得ないのではないか、と意見を出させてもらいました。「お知らせします~」。何十年も変わらぬ競馬場からの独特のアナウンス口調は味があって嫌いではないのですが、中央競馬の楽しみ方が大きく変化しているわけだし、もう少しスピーディーかつ端的に伝えられないものかなぁ・・・という競馬中継司会者の独り言でした。
お知らせします/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ
- 02/02 (木) もしも、こんなJRA賞があったら…/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ
- 01/26 (木) 幻の誘致移転計画 ~70周年・中京競馬場前史/大澤幹朗の競馬中継ココだけ…
- 01/19 (木) カメレオン競馬場/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ
- 01/12 (木) 福永騎手の101勝/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ
- 12/29 (木) ゆく年くる年/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ

大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。