日本時間の8日朝に行われたケンタッキーダービーは、現地では単勝最低20番人気(日本では19番人気)だったリッチストライクが優勝。イシリアルロードが6日に出走を取り消し、繰り上がりで出走権が回ってきた馬が大外枠から勝利するというケンタッキーダービー史上に残る波乱の結果となりました。
最初の400mが21秒78、800mが45秒36という空前のハイペースだったことと、大外枠からのスタート直後に内に入れ、後方馬群の中から内ラチ沿いを突き抜けるというソニー・レオン騎手の好騎乗が導いた「A Stunning Upset Victory」(見事な番狂わせの勝利)。アメリカメディアによると、現地単勝オッズ80倍のリッチストライクは、1913年に92倍で勝ったドーンレイルに次ぐA long shot(人気薄)のケンタッキーダービー優勝。また、大外枠からケンタッキーダービーを制したのは、1930年に現在のようなゲートが導入されて以降、2008年のビッグブラウンに続いてリッチストライクが2頭目だったということです。
見事148代目のケンタッキーダービー馬となったリッチストライク。父は2015年のトラヴァーズステークスで3冠馬アメリカンファラオを破るUpsetを起こしたキーンアイス(Keen Ice/父Curlin)で、Smart Strike直仔の母Gold Strikeとの産駒リッチストライクはSmart Strikeの3×2という配合です。また、リッチストライクの8歳上の姉で、カナダの芝G2ナタルマSの勝ち馬ラナモン(父Sky Mesa)は社台コーポレーション白老ファームで繋養されていることも報じられました。池江泰寿厩舎の1勝クラスの3歳馬バハルダール(父Pioneerof the Nile)は“ケンタッキーダービー馬の甥っ子”となったことで、今後、注目が増しそうです。
そして“神騎乗”でリッチストライクを勝利に導いたソニー・レオン騎手。ベネズエラ出身の32歳はこれがケンタッキーダービー初騎乗で、これまで重賞勝ちはなかったということです。私は去年のジャパンダートダービーを12番人気のキャッスルトップで勝利し、重賞初勝利がJpnIという快挙を成し遂げた仲野光馬騎手のことが思い浮かびました。まさにアメリカンドリーム。競馬には夢があります。
今回の海外馬券発売の売り上げは10億円を超え3年前の倍以上となったとのこと。去年のブリーダーズカップからつづく日本馬の大活躍で海外競馬への関心が高まっているのでしょう。ただ今回は、単勝19番人気、3連単2702番人気ということで、海外馬券の難しさを実感された方も多かったのではないでしょうか。競馬は何が起こるかわからないのは日本も海外も一緒。次回の海外馬券発売は、順調ならシャフリヤールが出走する6/15のプリンスオブウェールズSになると思います。今度は馬券も日本馬もいい結果が出るといいですね。
ケンタッキーダービーの中継をご覧いただいた皆さん、ありがとうございました。そしてクラウンプライドの陣営の皆さん、お疲れ様でした!
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。