いよいよ札幌記念が近づいてきました。昨年の覇者でありGI・3勝の白毛馬ソダシ、同期のオークス馬ユーバーレーベン、ドバイターフを逃げ切ったパンサラッサ、香港ヴァーズ2勝のグローリーヴェイズ、第83代ダービー馬マカヒキのGI馬5頭に、従妹ソダシとの白毛対決を実現させたハヤヤッコ、パンサラッサとの対決が注目のジャックドールに、ウインマリリン、ユニコーンライオン…。よく使われる表現ではありますが、今回ばかりは、まさしく「スーパーGII」と呼ぶにふさわしいですよね。
豪華メンバーが見込まれた段階でJRAは、札幌記念当日の札幌競馬場の入場を、指定席券、または入場券の事前予約・購入者に限定すると発表しました。指定席は約2,000席、事前販売される入場券は最大18,000枚ということですから、21日の札幌記念には最大約20,000人が札幌競馬場に集う見込みです。感染状況を鑑みたJRAの賢明な判断ですが、もし入場制限がなかったら何人くらいになったんだろうと想像してしまいます。
ところで、今年で58回目を数える札幌記念の歴史上、最も入場者が多かったレースは、どのレースで、何人くらいが札幌競馬場に集まったと思いますか?
女傑エアグルーヴが牡馬を蹴散らした1997年、セイウンスカイが差す競馬で快勝した1999年、単勝1.5倍のブエナビスタが届かず2着だった2009年、ゴールドシップ対ハープスターの2014年…。人数は4~5万人くらい? 予想はその辺りかと思いますが、実はそのどれでもありません。
正解は1976年7月11日の第12回札幌記念。札幌競馬場には、なんと60,549人が集まったというのです。一体どんなメンバーだったのでしょうか。
この年、東京競馬場で行われた皐月賞で、関西の貴公子テンポイントに5馬身差をつけて圧勝し「天馬」と呼ばれたトウショウボーイ。ダービーで、そのトウショウボーイを出し抜いた第43代ダービー馬クライムカイザー。なんと、今なお伝説となっている1976年春のクラシック優勝馬2頭が札幌記念に揃ったのです。
さて結果はどうだったのか。1番人気はトウショウボーイでしたが、2着。一方、クライムカイザーは勝ち馬から8馬身も差をつけられての3着。史上最多の60,549人が目の前で観戦した札幌記念の優勝馬は、これがオープン入り2戦目だったグレートセイカンでした。
というのも、当時は洋芝を導入して札幌競馬場のような寒冷地でも芝コースを設置できるようになる10年以上も前のこと。札幌記念はダート2000mを舞台に行われ、しかもハンデ戦でした。春のクラシックを勝ったトウショウボーイとクライムカイザーが58キロを背負ったのに対し、トウショウボーイ世代より1歳上の牡馬グレートセイカンは1キロ軽い57キロ。そして何より、グレートセイカンは「ダート巧者」だったのです。
近年、多くのGI馬が出走し「GI昇格論」も出現する札幌記念。とにもかくにも、全馬、無事に、それぞれが秋につながる走りを見せ、令和版「伝説の札幌記念」を見せてほしいものです。
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。