20日、小倉競馬場で行われたダート1700mの2歳新馬戦では、今村聖奈騎手が騎乗したヤマニンウルスが1番人気に応えて勝利しました。今村騎手は中央・地方合わせた勝利数が「31」となって、秋以降のGIレース騎乗が可能になったことが話題となりましたが、当コラムで注目するのは、2歳レコードで勝ったヤマニンウルスが2着馬につけた着差です。
ゴール前は、かなり引いた映像にしても後続馬が映らなかったので、相当な差がついたことは分かりましたが、10馬身を超える着差は全て「大差」となってしまうので、一体どれくらいの「大差」がついたのか気になっていました。
そして中継の担当が終わった後に発表された2着とのタイム差は、なんと「4.3秒」! これは1986年3月1日に阪神競馬場で行われたダート1800mの新馬戦で、ツキノオージャが2着馬につけた着差「3.6秒」を36年ぶりに0.7秒も更新するJRA平地競走史上最大着差となりました。
では、4秒以上の差とは「何馬身差」なのでしょうか。
一般的に目安となっている「1秒=6馬身」で計算すると「6馬身×4.3秒=25.8馬身差」となりますが、もう少し正確に出すために上がり3ハロンのタイムから計算してみましょう。
ヤマニンウルスの上がり3ハロンは35.8秒。ここから秒速を出すと600m÷35.8秒≒16.7m/sとなって、4.3秒差ですから16.7×4.3は約71.8(m)! 1馬身を2.5mとすると、71.8÷2.5≒28で「約28馬身差」ということになります。とんでもない「大差」です。
ところで20日の競馬では、新潟1Rの障害未勝利でも、マサハヤニースが「大差勝ち」しました。2着馬とのタイム差は「3.2秒」でしたが、こちらはマサハヤニースの「平均1ハロン」のタイム「12.9秒」から上記の方法で計算すると「約20馬身差」。1日に2度も「大差勝ち」があったのは、2020年1月18日以来のことだったようです。
今年は、5月7日の新潟4Rで行われた4歳以上障害未勝利でも、勝ち馬フォッサマグナが2着馬に「5.1秒差」をつけるという大差勝ちがありました。同様の計算をすると、こちらは「約31馬身差」。それでも障害競走における着差としては歴代7番目で、史上最大着差は30年以上前の1992年4月11日の中山大障害・春でシンボリクリエンスが2着馬につけた「8.6秒差」。勝ち時計から平均秒速を出して計算すると「約50馬身差」です!
でも世界に目を向ければ、やはり上には上がいます。なんと今月15日という最近の出来事。この日、イギリスのバンゴー=オン=ディー競馬場で行われた障害競走を勝ったPresentandcountingという馬が2着馬につけた差は「55馬身」だったそうです(笑)。
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。