先週末、札幌競馬場では3年ぶりに「ワールドオールスタージョッキーズ」が行われました。今年は、短期免許で来日中のチャクイウ・ホー騎手を含め、海外から6人の騎手が招待され、このうち4人は日本での初騎乗でした。
今回はこの中の1人、フランスの女性騎手、コラリー・パコー騎手の負担重量についての少しマニアックなハナシです。
パコー騎手は「ワールドオールスタージョッキーズ」の4戦以外にも、日曜日の重賞キーンランドカップなど計9鞍に騎乗しましたが、うち3鞍は「平場」のレースでした。中央競馬では「平場」のレースに騎乗する女性騎手に対し、2019年3月から永久的に2キロ減の恩恵が与えられています。しかしパコー騎手には土日の平場の3鞍とも減量の恩恵がありませんでした。「女性騎手なのにどうして!?」と思ったのは私だけでしょうか…。
実はこの疑問を感じたのは初めてではありませんでした。前回の「ワールドオールスタージョッキーズ」が行われた2019年8月。この年はリサ・オールプレス騎手とミカエル・ミシェル騎手の2人の女性ジョッキーが招待されていました。
このうちミシェル騎手は「ワールドオールスタージョッキーズ」の4戦のみの騎乗でしたが、短期免許でJRAの騎乗経験も豊富なオールプレス騎手は、平場2戦を含む7戦に騎乗していました。この時は既に「女性騎手は永久に2キロ減」の新ルールが施行されていましたが、今回同様、オールプレス騎手に減量の恩恵はありませんでした。
というのも、日本中央競馬会競馬施行規程の第74条によると、平場戦で負担重量の減量が行われる“女性騎手”とは、JRAの騎手と地方競馬の騎手に限られていて、短期免許や今回のように招待競走で来日する外国人騎手には適用されていないのです。女性騎手だけど“女性騎手”じゃない。3年前も今年も、個人的には何となくモヤモヤしてしまいました。
今やJRAには4人の女性騎手が存在し、中でも先週末4つの勝鞍を重ねた今村聖奈騎手は現在32勝で全国リーディング28位という活躍を見せています。「永久2キロ減」の運用については、今後、見直しを含めた柔軟な対応を議論してもいいのかなと思っています。
また、地方競馬にはもっと多くの女性騎手がいますし、JRAにも海外からの招待騎手を含めた女性騎手限定のシリーズのようなものがあってもいいと思います。ミシェル騎手やパコー騎手がいるフランスのように「女性騎手リーディング」があっても盛り上がりそうですよね。
中央競馬が、女性騎手がますます活躍し、輝く舞台になっていくことを期待しています。
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。