今月8日、コンサートボーイが30歳で天寿を全うしたことが報じられました。2日前までは元気だったものの、前日から体調を崩し、皆既月食の夜に息を引き取ったそうです。コンサートボーイといえば、1995年の中央・地方の「交流元年」直後の1990年代後半に活躍した大井競馬所属の名馬で、キャリアのハイライトは何と言っても1997年の帝王賞でした。
ダートグレード競走の「統一GI」に格付けされた初年度の第20回帝王賞。JRAからは、プロキオンS、かしわ記念と重賞連勝中のバトルプラン(1人気)、この年GI昇格初年のフェブラリーSを制したシンコウウインディ(2人気)、前年の東京大賞典優勝馬キョウトシチー(5人気)、かつての砂の王ライブリマウント(9人気)という豪華布陣が参戦。これらを、前走の大井記念まで7連勝と快進撃中の船橋アブクマポーロ(3人気)や、鞍上に的場文男を迎えた地元大井のコンサートボーイ(4人気)が迎え撃つという構図でした。
レースは、逃げの手に出た武豊騎乗のバトルラインを的場文男のコンサートボーイがぴったりとマーク。中団のインにつけた石崎隆之のアブクマポーロは3コーナーから進出し、3頭並んだ体制で最終コーナーへ。直線、粘る内のバトルラインを捉えたコンサートボーイが、更に外から強襲してきたアブクマポーロをクビ差凌いで優勝。1馬身差の3着バトルラインと4着馬との差は実に9馬身。大井の的場文男、船橋の石崎隆之、JRAの武豊という名手3人による熾烈な追い比べは、あの的場文男騎手が一番思い出に残るレースとして挙げるほど、帝王賞史上に残る名勝負でした。
そんなコンサートボーイの悲しい知らせを聞いて、私はグリーンチャンネルの会議室に昔から飾られていた木彫りの像を思い出しました。
台座の正面には「コンサートボーイ号」の名前。右側には「制作者 船越三弘 2000.2月.」とあります。
私がグリーンチャンネルにお世話になりはじめた頃には既に飾られていたのですが、歳月が流れ、どういったいきさつでそこにあるのかが分からなくなってしまいました。そこで、ツイッターでご存知の方を募ったところ、制作者の船越三弘さんのお嬢さんから連絡をいただきました。
北海道日高町(旧門別町)で牧場をされている船越三弘さんは、コンサートボーイの生産者、かつ初代のオーナーで、コンサートボーイは現役引退後も種牡馬として里帰りし、種牡馬引退後も助成を受けながら船越牧場で余生を過ごしていました。
お嬢さんによると、帝王賞を勝った記念にお父様がいくつか制作され、その一つがグリーンチャンネルに寄贈されたのだそうです。素人が誤解を恐れずに言うと、専門のプロの手による物とは違い、何とも言えない味があり、名馬の力強さと制作者の愛情が伝わってくる素晴らしい作品だと思います。
コンサートボーイの記憶を残すためにも、これからも大切に飾らせていただきます。
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。