今年最後のコラムとなりました。まもなく終わる2022年の競馬界を振り返ります。
(1)中東での大活躍
秋にはサッカー日本代表が中東の地で活躍しましたが、今年序盤には日本調教馬が中東で活躍しました。2月26日のサウジカップデーでは、C.ルメール騎手が騎乗した日本調教馬が4勝。翌月のドバイワールドカップデーでは、シャフリヤールがドバイシーマクラシックを、パンサラッサが同着でドバイターフを制するなど日本調教馬が5勝を挙げました。
(2)藤沢和雄調教師引退
JRA通算1570勝、重賞126勝(うちGI・34勝)の藤沢和雄調教師が定年のため2月をもって引退。6月に顕彰者に選定され、競馬博物館に「殿堂入り」されました。
(3)ルーキー騎手たちの活躍
3月、JRAでは20年ぶりとなる10人の新人騎手が新たにデビューしました。
障害馬術のトップライダーだった小牧加矢太騎手は障害専門騎手としてデビュー。1982年の競馬学校設立以降、競馬学校や他の競馬機関に所属したことがない初のJRA騎手となりました。デビュー年は77回の騎乗で9勝。暮れには初の「大障害」の騎乗も経験しました。
新人騎手が続々とデビューした3月5日。角田大河騎手はデビュー戦となった阪神1レースを勝利し、初騎乗初勝利を達成すると、続く第2レースも勝利。1996年の福永祐一騎手以来、26年ぶり3人目のデビュー2連勝を達成しました。
そして今村聖奈騎手。ルーキーイヤーは606回の騎乗で51勝。女性騎手によるデビュー年最多勝利数はもちろん、女性騎手による年間最多勝利数も大幅に更新。史上5人目、女性騎手初のルーキーイヤー50勝を達成。7月3日、テイエムスパーダでCBC賞を日本レコードで制し、グレード制導入後5人目となる重賞初騎乗初勝利。8月20日の小倉6レースでヤマニンウルスに騎乗し、2着馬につけた着差「4秒3差」はグレード制導入後の平地競走最大着差。通算19勝で新潟競馬年間リーディング獲得。記録ずくめの今年最後の騎乗でGI初騎乗も経験。来年以降もこの勢いは止まりそうもありません。
(4)親子3代制覇
5月1日の天皇賞(春)は、横山和生騎手のタイトルホルダーが優勝。祖父横山富雄(1971年)・父横山典弘(1996、2004、2015年)に続き、史上初の親子3代天皇賞(春)制覇となりました。前年には弟の武史騎手がエフフォーリアで天皇賞(秋)を制し、史上初の親子3代天皇賞(秋)優勝騎手となっている「横山ファミリー」。来年も目が離せません。
(5)レジェンド健在
5月29日。今年の日本ダービーはドウデュースが優勝。史上最多33回目のダービー騎乗だった武豊騎手は史上最多6回目のダービー優勝。53歳2ヶ月15日でのダービー制覇は最年長記録を36年ぶりに更新。武豊騎手は7月13日のジャパンダートダービーもノットゥルノで勝利し、自身3度目の同一年での芝&ダートのダービー優勝。
海外では同世代のデットーリ騎手が2023年限りでの現役引退を発表、後輩の福永祐一騎手も来春、調教師に転身する運びとなりましたが、日本競馬のレジェンドは2023年もますます盛んです!
(6)GIレース1番人気15連敗
今年のJRAのGIレースはフェブラリーSから菊花賞まで、1番人気馬が15連敗。連敗を止めたのは天皇賞(秋)で1番人気に応えたイクイノックスでした。
(7)初物づくし
今年のJRAのGIレースでは、人馬とも初めてのタイトル獲得が相次ぎました。ジョッキーでは、高松宮記念でデビュー16年目の丸田恭介騎手が、スプリンターズSで7年目の荻野極騎手が、秋華賞では同じく7年目の坂井瑠星騎手が、チャンピオンズCでは9年目の石川裕紀人騎手が、いずれもGI初勝利。
調教師では、スターズオンアース(桜花賞)の高柳瑞樹調教師、ソングライン(安田記念)の林徹調教師、ヴェラアズール(ジャパンカップ)の渡辺薫彦調教師、そしてドゥラエレーデ(ホープフルS)の池添学調教師がGI初勝利。
高松宮記念のナランフレグ、大阪杯のポタジェらは重賞初勝利がGI初勝利。ジャパンカップのヴェラアズールはGI初出走初勝利でした。
(8)相次いだ偉大なるオーナーの訃報
1月19日。社台グループ創始者・吉田善哉さんの妻で、2冠牝馬ベガや秋華賞馬ファビラスラフイン、桜花賞馬キストゥヘヴンらのオーナーだった吉田和子さん。100歳。
3月27日。「ニホンピロ」の冠名で知られ、GIを3勝したニホンピロウイナーやジャパンカップダートを勝ったニホンピロアワーズらを所有した小林百太郎さん。93歳。
10月17日。「シゲル」の冠名で数多くの競走馬を所有し、年ごとに「宝石」「役職」「果物」「魚」「動物」など、テーマ馬名で私たちを楽しませてくださった森中蕃さん。87歳。
そして9月8日。世界の競馬に大きな影響を与えた英国女王、エリザベス2世。96歳。
来たる2023年も、競馬界にとって、皆さんにとって良い年になりますように…。
※次回の更新は1/12(木)を予定しています。お楽しみに!
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。