4日、中央競馬では6人の新人騎手がデビューしました。20歳と19歳が各1人、18歳が3人、17歳が1人(小林美駒騎手は今月19日が誕生日)と、まさに「フレッシュ」な6人です。一方で当日の阪神競馬では、新人の田口貫太騎手が2着と健闘した第1レースで55歳の横山典弘騎手が勝利。またメインの重賞チューリップ賞は53歳の武豊騎手が勝利するなど、50代の「ベテラン」が存在感を見せつけました。
言うまでもなく「ベテラン」とは、「長年の経験を重ね、その道に熟達した人」を表現する言葉ですが、その語源が「古い」「年老いた」を意味するラテン語「vetus」に由来していることや、英語では「退役軍人」「古参兵」の意味で「veteran」を使うことが多いためか、アスリートの方に対してむやみに「ベテラン」を使うと嫌がる人も少なくありません。競馬の騎手に限らず、昨今のアスリートは選手寿命も全盛期も長くなっており、どこから「ベテラン」と呼べるのか、じつは微妙な気がします。
競馬の騎手でいうと、どこからが「ベテラン」なのでしょうか。基準は、年齢、キャリア年数、それとも…?「ベテラン」と感じるかどうかは人それぞれなのです。そこで、騎手の年齢とキャリアを並べてみますので、皆さんにとっての「ベテラン」のラインを考えてみてください(年数は騎手としてのキャリア。敬称略)。
的場文男(66歳/50年目)。ここは問題ないでしょう(笑)。「超」のつく「大ベテラン」。
柴田善臣(56歳/39年目)、小牧太、熊沢重文、横山典弘(55歳/38年目)、武豊(53歳/37年目)、田中勝春(52歳/35年目)、江田照男(51歳/34年目)。かつて武豊騎手が5G(爺)と称した50代騎手も増えています。少なくとも「ベテラン」と呼んで全く問題はないでしょうね。競馬学校1期生の柴田善臣騎手は「ベテラン」の前に「大」をつけてもいいかもしれません。
岩田康誠(48歳 ※12日に49歳の誕生日/32年目)、吉田豊、幸英明(47歳/30年目)、和田竜二(45歳/28年目)、ミルコ・デムーロ(44歳/29年目)、クリストフ・ルメール(43歳/24年目)、池添謙一、酒井学(43歳/26年目)。この辺りから意見が分かれるかもしれません。幸騎手の場合、競馬界随一の“イケメン”なので、「ベテラン」という言葉がそぐわない感じもありますし、福永調教師の同期である和田騎手も若々しいですよね。外国出身騎手は年齢不詳(笑)。お茶目な池添騎手は少年ぽいイメージもあるのではないでしょうか。
戸崎圭太、北村宏司(42歳/25年目)、森泰斗(42歳/22年目)、ジョアン・モレイラ(39歳/22年目)、田辺裕信(39歳/22年目)、吉田隼人(39歳/20年目)、松岡正海(38歳/21年目)、川田将雅、藤岡佑介(37歳/20年目 ※藤岡佑介騎手は今月17日が37歳の誕生日)、北村友一(36歳/18年目)、藤岡康太(34歳/17年目)、三浦皇成(33歳/16年目)、国分恭介&優作(32歳/15年目)、横山和生(29歳/13年目)…。
「○○騎手って△△騎手より年下(年上)なんだ!」といった声が聞こえてきそうです(笑)。また、“マジックマン”という異名はモレイラ騎手の「ベテラン」感を強めていますよね。さすがに、この辺りではラインを引いていいのではないでしょうか。キャリアなら20年以上、年齢だと“アラフォー”位が目安なのでしょうか。
…と、「ベテラン」のイメージは、感じる人も、対象者も、人それぞれ。線引きは一概に出来ません。「まだまだ若いぞ!」との思いから「ベテラン」という言葉に対して抵抗がある人もいるので、「キャリア(経験)豊富な人」とか「熟練」「円熟」といった表現も模索しながら、安易に「ベテラン」を使わないようにはしようと思います。
さて、2021年の1月にスタートした「競馬中継・ココだけのハナシ」が、なんと今回で100回目を迎えました。亀谷競馬サロン・コラムニストの中では、ようやく「見習い」が取れて「中堅」といったところかと思います。「ベテラン」を目指して、これからも楽しいコラムをお届けできるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願いします!
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。