日本時間7日の朝、アメリカ・ケンタッキー州のチャーチルダウンズ競馬場でケンタッキーダービーが行われます。今年は史上初めて複数の日本調教馬が出走し、このレース2年連続3回目の海外馬券発売も行われます。
今年で149回目を数えるケンタッキーダービーの歴代優勝馬には、競走馬の血統表に度々登場する名馬も数多く見られます。そこで今回は「血統表で必ず目にするケンタッキーダービー馬3頭」を取り上げます。
▼ノーザンダンサー(1964年/第90回)
カナダで生まれ、カナダでデビューしたノーザンダンサーは、2番人気でケンタッキーダービーに出走し、当時のレースレコードで優勝。続くプリークネスSも制し二冠を達成した。ベルモントSは3着に敗れ米国三冠制覇はならなかったが、故郷に凱旋してのクイーンズプレート(カナダのダービーに相当。今年からキングスプレートに名称変更)を圧勝。次走に向けての調教中に屈腱炎を発症し引退した。
種牡馬として20世紀最高の成績を収め、そのサイアーラインは、ニジンスキー(英国三冠馬)系、ヴァイスリージェント系(デピュティミニスター系)、リファール系、ノーザンテースト系、ダンチヒ系(デインヒル系)、ヌレイエフ系、ストームバード系(ストームキャット系)、サドラーズウェルズ系と枝葉を伸ばし、ミスタープロスペクター系とともに世界の競走馬の二大血統勢力となっている。
▼シアトルスルー(1977年/第103回)
ケンタッキー州の小さな牧場で生まれた地味な血統のシアトルスルーは、2歳G1シャンペンステークスを10馬身差で圧勝し、米国最優秀2歳馬に選ばれる。翌年も連勝を重ね6戦無敗でケンタッキーダービーに出走し、スタートで頭をゲートにぶつけ出遅れるも、すぐに先手を奪って逃げ切り勝ち。続くプリークネスS、ベルモントSも制し、無敗で米国三冠馬となった。翌年まで現役を続け、1つ下の三冠馬アファームドとの対決も制した。
産駒はタイキブリザードやダンツシアトルらが日本でも活躍。ベルモントSやBCクラシックなどを勝ったエーピーインディは、産駒プルピット、更にその産駒タピットがサイアーラインを伸ばし、ノーザンダンサー系とミスタープロスペクター系の2系統に対抗するボールドルーラー系(ナスルーラ系)ラインとなっている。
▼サンデーサイレンス(1989年/第115回)
デビュー前のサンデーサイレンスは「見栄えが悪く売れ残る」「ウイルスにかかり生死を彷徨う」「輸送中の馬運車の運転手が心臓発作を起こし横転する事故に見舞われる」…など波乱万丈。
しかし、デビューすると非凡な能力を見せ、サンタアニタダービーでは2着馬にレース史上最大着差の11馬身差をつけ勝利。重馬場で行われたケンタッキーダービーでは1番人気のイージーゴアに1馬身半差をつけ優勝した。右前脚を痛め、レース直前まで調教が行えないアクシデントに見舞われながら、プリークネスSでは再び1番人気のイージーゴアとの大接戦を制して二冠達成。初めて1番人気に支持されたベルモントSはイージーゴアに8馬身差をつけられて敗れた。秋にはBCクラシックを優勝。翌年、左足の靭帯の怪我で引退。14戦9勝2着5回。3着以下は1度もなかった。
引退後は米国で種牡馬生活を送る予定だったが、種牡馬としての評価は低く、当時の社台グループ代表だった吉田善哉氏が購入した。すると、13年連続リーディングサイアー(2位はディープインパクトの11年)、種牡馬としてのJRA獲得賞金記録(2位ディープインパクト)、輩出した12世代のすべてからG1級競走優勝、産駒が24ある中央競馬G1級競走のうち20で勝利…など数え切れない金字塔を打ち立てた。
産駒のJRA通算勝利数2749勝という歴代1位の記録は、サンデーサイレンス産駒の最高傑作ディープインパクトが年内にも更新する見込み。ディープインパクトの血が欧州で成功するなど「サンデーサイレンス系」が日本のみならず世界的なサイアーラインになる日も近い。
ケンタッキーダービーの模様は7日の午前7時からグリーンチャンネルで中継され、今年も私が進行を務めさせていただきます。大型連休最終日の日曜日は、いつもより少し早く起きて、アメリカ競馬最高峰のビッグイベントを一緒に楽しみましょう!
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。