7月7日の七夕に合わせ、今週日曜・福島の重賞と特別戦は、G3七夕賞、天の川賞、織姫賞、彦星賞と七夕にまつわるレース名がつけられています。
七夕は五節句の一つの星祭り、天の川は織姫と彦星が年に一度会うことが許された帯状の恒星の集まり、織姫は「こと座」のα星(一番明るい星)ベガ、彦星は「わし座」のα星アルタイルのことです。
一方、同じ日の中京競馬・メインはG3プロキオンS。こちらも星の名前がついています。
競馬には星や星座などの名前がついたレースが実に多く、JRAのレースをざっと数えても20レースほどありました。またトゥインクルレースが行われている大井競馬には「〇〇座特別」というレースが“星の数ほど”あり、「しし座特別」「てんびん座特別」といったメジャーな星座から「ぎょしゃ座特別」「みなみのうお座特別」といったマイナーな星座のレースまで存在します。
競馬をきっかけに星や星座についての知識も深められたら…ということで、今回はプロキオンSの「プロキオン」をマニアックに深掘りしましょう。
プロキオンは「こいぬ座」のα星で、シリウス、ベテルギウスとともに「冬の大三角形」を形成しています。シリウスは「おおいぬ座」のα星、ベテルギウスは「オリオン座」のα星で、いずれもJRAのレース名になっています。
中央・地方の交流元年(1995年)の翌年に新設されたプロキオンSは、当初は阪神のダート1400mで4月に行われていましたが、開催時期が6月、さらに7月に変更となり、2012年からは中京競馬場で施行。京都競馬場の改修工事の影響で2020年は阪神のダート1400m、一昨年と去年は小倉競馬場のダート1700mで行われましたが、今年は4年ぶりに中京競馬場ダート1400mという条件に戻ります。
1997年創設のハンデ重賞・シリウスSは、当初12月に阪神ダート1400mで行われていましたが、JBCスプリントの創設に合わせて秋に移動。2007年以降は、ジャパンカップダート、チャンピオンズカップの前哨戦として阪神のダート2000m戦になりました。京都競馬場の改修工事の影響で過去3年は中京のダート1900mで行われましたが、今年は4年ぶりに阪神に戻る予定です。
ベテルギウスSは、2000年から暮れの阪神で行われているオープンのダート戦で、2007~16年に2000mで行われた以外は1800mで行われています。2019年以降はリステッド競走に格付けされました。
では、これら3つのレースを全て制した“冬の大三角馬”はいるのでしょうか?
答えは「NO」です。ただ、2つのレースを制した馬は3頭いました。
1頭目はマイネルブライアン。4歳(現在の表記で3歳)時の2000年暮れにシリウスSを制し、翌年暮れにベテルギウスSも勝利しました。ベテルギウスSは2002年も連覇。これらは全て藤田伸二騎手の手綱でした。
2頭目はスターリングローズ。5歳時の2002年、プロキオンSとシリウスSを連勝後(プロキオンSは翌年も連覇)、秋には盛岡で行われた第2回JBCスプリントも優勝しました。福永祐一騎手の代表馬の1頭でした。
最後はキングスエンブレム。2010年の5歳時、ダート重賞初挑戦だったシリウスSを福永祐一騎手とのコンビで制すると以後7連敗を喫しますが、2011年暮れに今度は岩田康誠騎手とのコンビでベテルギウスSを勝利しました。
現状、プロキオンSのみ短距離戦なのがハードルとなりそうですが、いずれも古馬OPのダート戦なので、冬の大三角完全制覇は、理論上は可能なはず。いつか達成されたら、非公式な快挙をこっそり喜びたいと思います。
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。