以前、現横浜DeNA監督の三浦大輔さんから『大澤さんと言えば“安平町ノーザンファームの生産”ですよね』とおっしゃって頂いたことがあります。なるほど、グリーンチャンネルの中央競馬中継内で勝ち馬の生産地と生産者を紹介するときに頻繁に口にする“安平町ノーザンファームの生産”のイメージが強いようです(笑)。
競馬ファンなら「安平町」を「あびらちょう」と読むのは難しくないでしょう。でも、北海道に縁があるか競馬に詳しいかでもないと、実はなかなかの難読地名かと思います。「安平」は“ヤスヒラ”などと読んでしまいそうですし、「町」は“まち”とも読むことができます。
『都道府県市区町村』というサイトによると、全国に744ある自治体の町「○○町」のうち、37.4%にあたる278町が「まち」、62.6%にあたる466町が「ちょう」と読むということです。詳しく分布をみると、概ね東日本では「まち」、西日本では「ちょう」と読む傾向があり、実際、関東地方の1都6県にある82の町は全て「まち」、近畿地方の2府5県にある87の町は全て「ちょう」と読むのだそうです。
私の出身地・千葉県に16ある自治体の町は全て「まち」です。一方、20代を過ごした岩手県は15ある町のうち、「まち」が6、「ちょう」が9と分かれています。私の岩手局アナ時代は「平成の大合併」前だったので、今より「町」の数が倍ほどあり、入社当時、「まち」か「ちょう」かを必死で暗記したものです。
では競走馬の98%を生産している北海道はどうなのでしょうか。
北海道には129の自治体の町がありますが、そのうちの99%以上が「ちょう」と読みます。安平町も日高町も白老町も洞爺湖町も新冠町も浦河町も新ひだか町も…、み~んな「町(ちょう)」です。ですが、全部ではありません。129の町のうち、唯一、「まち」と読む自治体の町があるのです。
函館から車で1時間ほどの場所に位置する北海道茅部郡の森町(もりまち)。北海道駒ヶ岳や大沼といった観光名所があることでも知られる森町は、北海道で唯一「町」を「まち」と読みます。なぜ森町だけが「まち」なのかの明確な理由は不明なようですが、いずれにせよ、「まち」と読むのが1つしかないのならば、岩手での局アナ時代のように、「まち」か「ちょう」かを必死に暗記する必要はなさそうです。
ところで、北海道唯一の“まち”「森町」に生産牧場はあるのでしょうか。
実はたった1つだけあります。
「笹川大晃牧場」は、森町に唯一存在するサラブレッド生産牧場です。かつて南関東を中心に活躍し、2000年の川崎記念や1999年の浦和記念、2002年のダイオライト記念を制したインテリパワーを生産した牧場でもあります。
生産馬の最近の勝利は地方競馬が中心で、JRAでの最後の勝利は、ちょうど1年前の去年7月24日。福島の2勝クラス・米沢特別でエスケーアタランタが勝って以来、勝利がないようですが、もしも「その時」が来たら、「もりちょう」と間違えることなく、しっかり「森町(もりまち)笹川大晃牧場(ささがわだいこうぼくじょう)の生産」とご紹介しようと思います。
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。