いよいよ今週末から秋競馬がスタートします。この秋、個人的に注目しているのが「ディープインパクト産駒のJRA通算勝利数がサンデーサイレンスを超えるのはいつか」ということです。
ディープインパクト産駒のJRA通算勝利数は9/3現在で2745勝。先週末は新潟記念のサリエラやプラダリアなどにチャンスがあったものの3週間ぶりに産駒の勝利がありませんでしたが、父サンデーサイレンスの持つJRA通算最多勝利数『2749勝』まで、あと4勝と迫っています。偉大なる親子は、まもなく肩を並べます。
サンデーサイレンスとディープインパクト。生きた時代が違うため、優劣をつけるのはナンセンスですが、2頭の足跡を振り返る意味で、それぞれの記録を見比べる意義はあると思います。2頭の歩みは日本競馬の歩みです。
サンデーサイレンスが持つ偉大な記録のうち、通算勝利数はディープインパクトがまもなく更新しますが、そのほかの記録はどうでしょうか。
サンデーサイレンスが持つ13年連続リーディングサイアー(1995~2007年)をディープインパクトが更新するのはかなり厳しい情勢です。ディープインパクトは2012年から去年まで11年連続でリーディングサイアーとなっていますが、今年は9/3現在で3位。ディープインパクトより上位にいるのは、同時代のライバル種牡馬キングカメハメハの後継であるロードカナロアとドゥラメンテ。また、息子キズナには賞金で上回っているものの、勝利数では下回っている状況です。2歳世代がおらず、3歳世代も現役は4頭しかいないのですから仕方ありません。
サンデーサイレンスは同時代のトニービンやブライアンズタイムに獲得賞金で倍以上の差をつけるなど、ディープインパクトと比べると強力なライバルが不在でした。また、サンデーサイレンスが最後にリーディングを獲得した2007年の獲得賞金は約37億円でしたが、この額は去年2位だったロードカナロアの約39億円を下回ります。
サンデーサイレンスは311勝というJRA重賞勝利数記録も持っていますが、ディープインパクトはプログノーシスの札幌記念が286勝目でしたので25勝の開きがあります。一方、JRAのGI級勝利数は、今年の春の天皇賞でのジャスティンパレスの勝利がディープインパクト産駒の72勝目となり、サンデーサイレンスの71勝を超えました。また、先日急死したアスクビクターモアの去年の菊花賞優勝はディープインパクト産駒のクラシック24勝目で、これもサンデーサイレンスの23勝を更新しています。
2頭の記録で比較にならないのが海外実績です。サンデーサイレンス産駒の海外GI勝利は、ステイゴールドの香港ヴァーズ、ハットトリックの香港マイル、ハーツクライのドバイシーマクラシックの3勝ですが、ディープインパクト産駒は国内外の調教馬が海外のGIを31勝もしています。この数字の違いは日本調教馬の海外遠征の進歩を物語っていますが、それ以上に、フランスのビューティーパーラーや、アイルランドのサクソンウォリアー、スノーフォール、そして今年の英国ダービー馬オーギュストロダンなど、産駒の欧州調教馬たちが見せる大活躍は今まででは考えられません。何より、ディープインパクトは日本産の種牡馬なのです。
一方、サンデーサイレンスが2004年にあげた年間328勝(ディープインパクトの最高は2018年の265勝)、2005年の年間獲得賞金92億2004万4000円(ディープインパクトの最高は2020年の79億5291万2000円)など、父が持つ記録の中には偉大な息子でも超えられないものも多くあります。通算勝利数が息子に超えられたとしても、種牡馬サンデーサイレンスが偉大であることに何ら変わりはありません。
2頭とも今はもうこの世にはいないサンデーサイレンスとディープインパクト。息子ディープインパクトは、サンデーサイレンスの血を世界に広げることで、自身はもちろん、父の偉大さも世界に証明し、日本競馬のステージを何段も押し上げてくれました。今度は、世界中のディープインパクト産駒たちが、この親子の血をさらに輝かせてくれる日が来るのが楽しみです。
ライジングフレーム、ノーザンテースト、サンデーサイレンスと塗り替えられてきた種牡馬としての産駒の通算勝利数記録。ついに日本産の大種牡馬ディープインパクトが父を超える日が近づいてきました。
2023/09/07 (木)
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。