競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。今回のテーマは「135」です。
1月23日、IFHA(国際競馬統括機関連盟)から発表された2023年度の「ロンジンワールドベストレースホースランキング」で、ジャパンカップを完勝したイクイノックスが135ポンドを獲得し、年間世界1位に輝きました。
135ポンドのレーティング値は、1999年の凱旋門賞2着で134ポンドを得たエルコンドルパサーを24年ぶりに上回り、日本調教馬歴代最高値。日本調教馬の年間世界1位は、2014年のドバイデューティフリー(現ドバイターフ)を圧勝し130ポンドを獲得したジャスタウェイ以来、9年ぶり2頭目の快挙です。
また、イクイノックスが135ポンドを得た昨年のジャパンカップは、同じくIFHAが発表した2023年世界のトップ100・GI競走で日本競馬史上初めて世界1位を獲得しました。
敢然と大逃げを打ったドバイターフの優勝馬あっという間に捉え、三冠牝馬や二冠牝馬、同期のダービー馬、GI・3勝の最強ステイヤーといった日本競馬を代表する強豪を難なく振り切ったジャパンカップでのイクイノックス。日本競馬史に燦然と輝くパフォーマンスは、世界の競馬史の中では、どのような位置付けなのでしょうか。
イクイノックスの135ポンドより高い数値の競走馬は、世界の競馬史上7頭しかいません。
G1・10勝を含む生涯成績14戦全勝のフランケルと、同じく生涯6戦全勝で2着馬につけた着差の合計が71馬身というフライトラインという、欧州と米国の怪物2頭が140ポンドで歴代世界一。
1986年の凱旋門賞を豪脚で差し切ったダンシングブレーヴが138ポンド(2013年の見直し前は141ポンド)。1997年の凱旋門賞をレコードで圧勝したパントレセレブルが137ポンド。
2009年の英国クラシック二冠馬にして凱旋門賞馬のシーザスターズ、1991年に英愛ダービーとキングジョージを制したジェネラス、1981年の英国ダービーを10馬身差で圧勝したシャーガー(修正前は140ポンド)の3頭が136ポンドです。
一方、135ポンドを得たのはイクイノックスが9頭目。その顔ぶれを見てみましょう。
▼エルグランセニョール
生涯成績8戦7勝。唯一の2着はセクレトに敗れた英国ダービー。同期、同厩舎で、同じノーザンダンサー産駒のサドラーズウェルズより現役時の成績は上だった。
▼スワーヴダンサー
1991年にジョッケクルブ賞(仏ダービー)、愛チャンピオンSに続き、凱旋門賞ではキングジョージ6世&クイーンエリザベスDSを7馬身差で圧勝したジェネラスを相手に完勝。
▼セントジョヴァイト
1992年の愛ダービーを12馬身差で圧勝し、同年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスDSは6馬身差の快勝。
▼シガー
1995年のBCクラシック、1996年のドバイワールドカップなどG1競走11勝。2年連続エクリプス賞(米国)年度代表馬。
▼デイラミ
1999年にキングジョージを5馬身差、愛チャンピオンSを9馬身差、BCターフを2馬身半差で快勝するなど、G1通算7勝。
▼モンジュー
1999年ジョッケクルブ賞、愛ダービー、凱旋門賞、2000年のキングジョージなどG1通算6勝。1999年凱旋門賞の2着馬はエルコンドルパサー。同年のジャパンカップはスペシャルウィークの4着。
▼ハービンジャー
2010年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスDSをキングショージ史上最大着差の11馬身差で圧勝。引退後は社台スタリオンステーションで種牡馬入り。
▼バーイード
2021年デビューからマイル戦中心に10連勝。うちG1Iを6勝。ラストランとなったチャンピオンSで生涯初の敗戦(4着)を喫した。2022年のカルティエ賞(欧州)年度代表馬。
イクイノックスより上位の顔ぶれも、イクイノックスが肩を並べた競走馬たちも、世界の競馬史を代表する名馬ばかりです。今月中旬には種牡馬生活がスタートし、GI・9勝馬アーモンドアイらトップクラスの牝馬との種付けが予定されているというイクイノックス。あらためて、その偉大さと、彼が駆け抜けた時代を共有できた幸せを感じます。
▲ジャパンカップでのイクイノックス